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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅

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 せっかくなので、工事中の「青崩峠トンネル(仮称)」についても少し触れておく。
 2019年に掘削が開始され、2023年5月に貫通、同年12月現在、トンネル内部の掘削面をコンクリートで巻き立てる「覆工(ふっこう)」の工事が進められている。
 最初の構想から半世紀、「三遠南信道」の最難所言われている中央構造線の横を掘り抜き、文字通り工事のヤマ場を越えた。飯田国道事務所が公開した貫通時の映像は六百万回も閲覧され、インターネット上では、歴史に残る技術的偉業を扱ったテレビ番組の「プロジェクトX」のレベルなどの称賛の投稿が相次いだ。

 最後に、「三遠南信自動車道」についても説明する。
 静岡と長野の県境を越えた交流や連携を図るとともに、長野県側から東名や新東名にアクセスし、広域的なネットワークを形成、山間部の救急医療や大規模災害時の緊急輸送路としての活用も期待される。 さらに、太平洋側と信州方面の新たな直結ネットワークが形成され、「道路不毛地帯」と言われる南アルプス南部に貴重な自動車ルートが開拓されることになる。ちなみに、「三遠南信」とは、愛知県東部(旧三河)、静岡県西部(旧遠江)、長野県南部(南信)の総称だ。(Wikipediaからの引用に加筆)

 横道に逸れ過ぎてしまったが、話を「キャンピングカーの旅」に戻そう。
 兵越峠を越えてのことだが、峠まで上っている時は気が付かなかったが、谷川の水の音やヒグラシのさびしそうな静けさを感じる鳴き声が聞こえた。木々の間から見える景色は山々の奥深さ、見上げると夏の空と入道雲。それは夏、強烈な夏の中を走っていた。
 崖側からは湧水のような水が道に流れ込み、谷側はガードレールがなく、時々、そちらに目をやると下腹が疼く。慎重な運転を続けた。そのため、速度が遅く、下っても、下っても、里にたどり着かない感じがした。最初の民家を見た時は少し安堵し、そのあたりから田畑や茶畑が見え始めた。

 道の駅「遠山郷」に着いた。
 緊張した体を休めようと、駅舎内にある温泉に入りたくなったが、このところ、道の駅は閉館していたようだが、今日は午後1時からの開館になっていた。まだ時間があるので、「ジル」の中で昼食を取ってから温泉と考えたが、日陰がなく、暑い中での昼食は厳しいので、先に進むことにした。

 道の駅の近くにスーパーがあり、好物の「鹿」と「マトン」の味付き肉を買って、自宅と息子宅への土産に「鹿」と「猪」を2袋ずつ買った。冷蔵庫の製氷棚に保管した。
 レジの人に、この先のR152について尋ねたところ、地蔵峠あたりの崖崩れで通行止めになっていて、その先の大鹿村(おおしかむら)には行けないとのことだった。念のため、その先の交番で再確認したかったが、パトロール中で不在だった。

 さらに北上すると、過去に一度、バイクツーリングの際に立ち寄ったことのある「梨元(なしもと)ていしゃば」が見えたので、その駐車場に入り、「ジル」を停めた。
 ここは南アルプス登山の玄関口としての機能もあったが、もう営業していないようだ。外のトイレもメンテされていない状態で閉まっていた。建物の裏手は山の斜面で、うっそうと木々が茂っており、その日陰があったので、「ジル」を移動させ、湯を沸かしてカップ麺を作って、昼食を取った。

 ここには、旧遠山森林鉄道のディーゼル機関車があり、車庫内に保管されていた。復元された客車は車庫の前のレールの上にあり、それらの写真を撮っていると、工事作業者がいたので挨拶すると、自然に会話になっていった。
 この森林鉄道の規格は軽便鉄道(軌間762mm)だったことから、以前に、軽便鉄道の取材で北海道まで行ったこと、また北海道では炭鉱の取材もしたことがあるとか、北海道の話をしたところ、驚いたことに彼は、札幌の出身で、今はこのあたりの工事の監督をやっているとのことだった。気が付くと、約15分も会話が弾んでしまった。
 「梨元ていしゃば」の建物の北側のR152に面した広いスペースには、機関車が走れる線路が敷かれており、保存会の人たちによって、機関車が客車を牽引して走らせているようだ。その姿を見たくなり、別途、開催日を調べることにした。

 R152のこの先はバイパスになり、山間を大きなRの少し上り勾配のある道を気持ち良く運転できた。
 このずっと先に地蔵峠があるのだが、その手前で、R152は再び途切れていて、代替路として蛇洞(じゃぼら)林道が迂回路として機能している。この峠の北側から、再びR152が始まっている。
 その林道の途中の分岐点から、さらにぐんぐんと東側に上って行くと主脈の南アルプスから伸びる支脈の「しらびそ峠(標高1,918m)」に至る。ここから先は許可車しか走れない。
 この峠からは南アルプスの南端部分の絶景が眺められる。そのため、ここを目的に3回ほど、バイクで来たことがあり、多くのバイクとすれ違った。今度は、南アルプスの山々が冠雪し始める晩秋の眺望を見たいため、また訪れたい場所だ。この狭隘な林道はバイクで走るには楽しいが、「ジル」では多分、かなり厳しい運転になるのだろう。

 旅の今、地蔵峠の周辺が通行止めになっていて、これ以上は北上できないとのことだったので、念のため、ロードマップを広げ、ネットで日本道路交通情報センターにアクセスしたところ、やはり通行止めになっていることを確認できた。
 そのため、R152の迂回路の蛇洞林道には入らず、その手前から、R474で飯田側に抜けるルートに変更した。

 かなり立派な「矢筈(やはず)トンネル」で伊那山地を抜けて、その先のループ橋で一気に高度を下げ、県道に入った。このトンネルは「三遠南信自動車道」の一部になるのだろう。

 飯田市内に下ってゆくと、次第に暑くなってきた。兵越峠は標高1,180m、飯田は449mなので、730mも標高を下げていて、加えて飯田市内は盆地なので、暑くなるのも頷ける。やがて、幹線道路のR153に出た。

 JR元善光寺駅(もとぜんこうじえき)あたりから、伊那盆地の西側の山手の道に向かった。そこは、かつて友人とバイクで走った中央アルプスの山麓の道で、りんご園の中を走る道だ。
 リンゴはまだ緑色のものばかりで、7月中旬の今では無理もない。ところが、その中に、赤いリンゴが見えた時、「ジル」を停めて写真を撮った。結局、その木だけに赤いリンゴが生っていた。

 さらに走ってゆくと、突然現れたのはアーチ橋の「月夜平(つきよだいら)大橋」、その先に展望台があり、そこに立ち寄った。伊那盆地の東側の南アルプスの絶景を見渡せるはずだが、夏の午後の今、かなりの雲が湧いており、遠景は霞んでいた。
 この展望台からは、南アルプスの主峰のほぼ全てを眺められるようで、かつて登山したことのある日本第2位の標高の北岳(3,193m)と間ノ岳(3,190m、奥穂高岳と並んで3位)も見られるはずだ。ちなみに、北岳と間ノ岳の間の稜線は「日本一の標高3000mの縦走路」と云われる。
 早朝に来れば、その絶景がくっきりと見えるため、いつの日か、再び戻ってくることを決めた。