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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅

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 湖岸はほとんど開発されておらず、数軒の別荘風な家が建っていて、その湖畔には釣り場が見える程度だった。そこの住人は、飯縄山の裏から湧き昇る積乱雲の「これぞ夏!」という景色を見ながら、釣り糸を垂れるのだろう。そう想像すると、彼らを羨ましく思った。
 この紀行文を書きながら、湖の南側の衛星写真を見たところ、樹林帯の中に別荘が点在していた。
 キャンピングカーは動く別荘のようなもので、季節、場所、天気、時間の4つのファクターの組合せで、幾つもの素晴らしい景色を眺められ、味わえると思っている。

 バードラインに戻り、次に向かったのは「大座法師池(だいざほうしいけ)」だ。
 その池畔はかなり開発されていて、イベントが開催できるほどの広場やキャンプ場、そして広い駐車場があった。バードライン沿いには飲食店も並んでいて、手打ちそば処もあった。
 「ジル」を駐車場に停めて、手漕ぎボート乗り場に行ってみた。南側に広がる池畔はぐるりと木々で覆われていて、ボートに乗って岸から離れると飯縄山が見えてくるのだろう。湖面は家族やカップルのボートやスワンボートが浮いていて、私ひとりで漕ぎ出すならば寂しさを覚えそうで、ひとり旅のおじさんは退散することにした。

 飯綱高原の南斜面に見えたのは「飯綱高原スキー場」で、その北東の飯綱東高原に見えたのは、飯縄山の支峰の霊仙寺山(れいせんじやま)で、その東斜面には「いいづなリゾートスキー場」があり、それらは昨日訪れた栂池のように大きくはないが、ここでも夏草が茂った風景が広がり、誰もいないし声も聞こえない、もちろん音楽も聞こえない。夏のスキー場はどこも寂しい場所だ。
 冬、雪が地上の色々なものを消してくれるが、それらが今、全て現れている。
 その中にレストランがあった。シーズンオフの閉店の状況なのか、完全に閉店してしまったのか分からないが、かなり朽ちた感じがした。若者のスキー離れやコロナの影響なのかもしれない・・・。
 そこで調べたところ、これまでは経営が厳しかったようで、経営母体が幾つか変わってはいたが、現在も営業されるスキー場だった。

 その先の三つ目の「霊仙寺池」に向かった。
 ここは有料の釣り池のようだが、誰もいなかった。対岸は開発されているようなので、そちらに行ってみたところ、広大な芝生、子供向けの用具(自転車、プール、スライダー)、スワンボート等、家族連れには良い場所のようだ。加えて、ゴルフ場もあった。
 池畔から北方面を眺めると、北信五岳の三つ、飯縄山、黒姫山、妙高山が見えた。
 これらは約8 km間隔でほぼ南北方向に直線上に並んでいる火山だ。どれも二重式火山で、外輪山と中央火口丘がある山だったと記憶している。

 それにしても、飯綱高原や隣の飯綱東高原には湖や池が多く、高原の凹地に水が溜まった自然の湖沼のようで、「富士五湖」のように、「飯綱○湖」のような総称を設けてはどうだろうか。後日、観光協会に提案してみたい。
 このエリアには、ゴルフ場にスキー場、キャンプ場に別荘地、そしてリゾート施設もあり、長野市民にとっての高原リゾート地なのだろう。

 「霊仙寺池」からほぼ北上すれば「野尻湖」だが、途中で、第三セクター「しなの鉄道」の黒姫駅に寄ることにした。
 北上していると、左前方の黒姫山と妙高山が次第に大きく見え始め、右前方には斑尾山、さらに、左側の飯縄山と黒姫山の間の奥には、戸隠山の複数のピークも見えた。
 県道から外れて、田んぼの中の道を走り、「北信五岳」の写真を撮ったが、1枚の写真に五岳は収まらず、広角レンズを使用しても不可能だ。そもそも、レンズ交換ができるカメラではないのだが。ここから南方向や南東方向に行けば、五岳を1枚の写真で撮れるポイントがあるのだろう。

 この細い道でのUターンは難しかったため、集落の中を抜けて元の県道に戻ることにした。そのとき、対向車の軽トラの運転手が窓を開けて手を振るので停車した。
 「機械が来るので注意して下さい」と言われ、その直後、「ジル」の車幅の1.5倍、車高はかなりある巨大な農業車両が現れ、急いで、道の横の少し空いたスペースに入って避けながら、その巨大さに驚いた。大規模な農家が所有しているのだろう。運転を再開した時、その車両の写真を撮っておけば良かったのにと、少し後悔した。

 黒姫駅前の広いスペースに「ジル」を停めて小休止。
 駅の改札口を見ていたら、10名ほどが下車してきた。全員、外国人だった。この付近に外国人が好む観光地があるのだろう。コロナ禍の日本だが、今、次第にインバウンド需要が増えているようだ。
 黒姫高原のことを殆ど知らなかった私は、駅舎の中の観光案内所で、アシスト自転車の片付けをやっていた女性スタッフに色々と訊いてみた。北信の山々の眺望を楽しむならば、「野尻湖テラス」が良いとのアドバイスをもらった。そこは外国人にとってもいい場所なのかもしれない。
 「ジル」に戻るとき、振り返って駅舎を見ると、その後方に黒姫山が見えた。その端正な山容から「信濃富士」と呼ばれるのも分かるが、晴れた日は自宅から見える富士山なので、そのシルエットは頭に入っている私にとっては、黒姫山は富士山を上から少し押しつぶしたイメージだった。

 黒姫駅から野尻湖に向かう途中、少し寄り道になるが、上信越自動車道の信濃町ICの先の道の駅「しなの」に立ち寄った。
 駐車場からは目の前に、スキー場と険しい外輪山が際立つ威風堂々たる黒姫山が見えた。目の前に広がる北信の山々から、少しではあるが、私が今いる場所の位置が次第に分かるようになってきている気がした。

 静岡県西部に住んでいる私の地元では、山が見える方角は北、その反対側は空が広がる南で、太平洋の遠州灘だ。したがって、よく知らない場所をクルマで走っていても、進んでいる方角がいつでも、おおよそ分かる。ここでは、北信五岳が地元の人のコンパスになっているのだろう。

 道の駅の駅舎では、幾つかの味の「おやき」が売られていた。「おやき」と言えばの「野沢菜」と、好みの「あんこ」の二つを買った。少し温かかったので、作り立てかもしれない。
 「ジル」のキッチンで袋麺を作って、おやきと一緒に食べる遅い昼食タイムになった。
 「ジル」を停めた場所が良かったのだろう、ダイネットの開けた窓からが黒姫山がきれいに見えていた。暑さを感じ始めた。先ほどまでは高原だったが、鉄道が走る場所は盆地のため、気温が高くなったのだろう。少し汗をかいていたので、扇風機のスイッチをオンにした。

 道の駅から「野尻湖」はすぐだ。今日の4つ目だ。
 ナウマンゾウの化石や旧石器時代の遺物が出土する湖としても知られているが、その類はあまり興味がなかったので、博物館はパスして、湖畔に向かった。
 そこには多くの観光客がいて、湖にはスワンボート、ヨット、ウィンドサーフィン等々、マリンスポーツが盛んなようで、賑やかな湖だ。幾つもの桟橋が設けられ、そこには手漕ぎボートが並び、モーターボートでの遊覧もできるようだ。一方で、湖に面したホテル街は小規模だった。