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静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅

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 スキーをやっていた頃、勤務先の先輩から、白馬でスキーをしようと誘われ、10人くらいで行った場所が、この「白馬みねかたスキー場」だった。しかし、白馬なのに小さ過ぎるスキー場にかなり落胆したことを憶えている。ゴンドラや高速のクワッドリフトなどはなく、3本のペアリフトで、最長滑走距離は約1000mのゲレンデで、スキーを楽しむというよりはスキルアップに取り組んだスキー場だった。
 そんなことを思い出しながら走ったのだが、このスキー場の入口に気付かず、通過してしまった。今は夏だから見落としてしまったのではないかと思った。
 この夜、「白馬みねかたスキー場」をネット検索したところ、2014年頃に閉鎖したとのことだった。当時は確かに、スキーブームが続いており、リフトの長い待ち時間には閉口したが、スキー人口はスノボ人口を含めても次第に減少し、それが原因だったのだろう。そして今、スキー人口は当時の1/4程度で、あの頃の賑わいはもう、どこのスキー場でもないのかもしれない。ちょっと寂しい気がする。

 JR白馬駅の西側の八方や栂池のスキー場などが広がる標高2,900m前後の後立山連峰や白馬連峰に対し、東側には1,500m前後の小谷山地(おたりさんち)があり、その南麓を迂回するようにR406が東に抜けているが、上り勾配は厳しく、道幅は狭く、カーブが多く、所々で、崖崩れや損傷した路肩の修復工事が行われていた。
 対向車と一度、ギリギリのすれ違いがあり、その際に、道にはみ出していた枝に「ジル」の左側を擦ってしまった。
 「ジル」の車幅は2m、車高は3.3mのため、このような道での運転は、左右に加え、上も注意しながらの運転になり、そこから先も、スピードは出せなかった。

 やがて、鬼無里(きなさ)の山村に入り、その先に旅の駅「鬼無里」が見えた。
 道の駅ではない「旅の駅」は初めてで、興味が湧いたこともあるが、小休止が必要な状況だったので、立ち寄った。そうなると、やはり甘いものが欲しくなり、自販機で買った炭酸飲料(メロンソーダ)を飲んだ。
 駅舎内は、物産を売っているコーナーに、飲食コーナーも。かなり小さな道の駅のような内容だった。

 旅の駅の前には「鬼無里ふるさと資料館」があり、「鬼無里」という妙な地名に関する情報があるかもしれないと思ったが、この先も山間の狭い道が続きそうなので、既に15時を回っているため、時間的な余裕が欲しく、入館しなかった。
 旅が終わってもやはり、この「鬼無里」の地名が気になっていたため、ネットで調べたところ、次の伝説があった。
 今は長野市の鬼無里地区だが、以前は鬼無里村であり、その村名の由来は「紅葉伝説」にあるといわれる。その主人公の「紅葉」が妖術を使う「鬼女」と疑いをかけられ、この地に流刑とされたが、その後、討伐されてしまい、「鬼女」がいなくなったことから「鬼無里」となったとされているとのことだった(ウィキペディアを参考)。
 なんとまあ、あられもない疑いを掛けられた紅葉さんは最後に討伐されるとは、何とも不幸な女性だったようで、西洋の魔女狩りにも似た話から、この紅葉さんはきっとすごい美人だったのだろうと勝手に想像した。

 旅の駅「鬼無里」から「戸隠神社中社(ちゅうしゃ)」までは15kmほどの山間の県道36号を走り始めるとやはり、道幅の狭い上り坂が連続していった。そしてすぐに、疲れを感じ始め、交通量が少なかったのは幸いだった。暫く走ったあと、門前町(鳥居前町)のような、多分、宿坊なのだろう、その町並みを走り抜けると戸隠神社に到着した。

 その時、広大な眺望を期待していた「大望峠」に立ち寄らなかったことに気付いた。いつ通過してしまったのか、全く気が付かなかった。
 その大望峠付近では、ここまで走ってきた県道は新道に変わっており、その展望台に面した旧道には、側道に入らなければならなかったのだが、それを見落としたようだ。
 この峠の展望台からは、戸隠連峰の西岳や北アルプスの雄大な眺めが望めるのだが、それを見逃すとは、ホントにもったいないことをしてしまったと後悔したが、そこまで戻る気力はもうなかった。
 ちなみに、昔、ここは名もない峠であったが、鬼無里村に住んでいた男性があまりの景色の美しさに「大望峠」と名前を付けて看板を置いたところ、本人も知らぬ間に、正式な名称になったそうな。

 戸隠神社には到着したが、このあたりのことは全く分からなかったため、神社の向かいの戸隠観光情報センターに入り、そこで入手した戸隠神社のマップを見ながら、色々と教えてもらった。
 たとえば、目の前にあるのは戸隠神社の「中社(ちゅうしゃ)」で、神社は五社で構成されていること、その五社巡りの前後の夜は宿坊を利用すると色々と教えてもらえるとか、中でも、戸隠神社の神主が営む宿坊に泊るならば戸隠の歴史や神様のお話を聞くことができ、さらには神殿での朝拝に参列できるなども教えていただいた。
 ついでに、車中泊ができそうな場所を訊いたところ、戸隠スキー場の駐車場がいいよと勧めてくれた。加えて、「ジル」を停めた有料駐車場は既に営業時間が終わっているので、朝までの駐車も可能ということも教えてくれた。サンクス。

 日没まではまだ少し時間がありそうなので、目の前の「中社」を参拝することにした。
 大鳥居を潜った先の右側に、御神木と崇められている「三本杉」があった。ひとつの株が地上で3本に分かれてはいるものの、巨大で立派なものだった。神が宿っている神体だと十分に納得してしまいそうだった。
 そこからは正面の階段の「男坂」を上って、社殿前にたどり着き、旅の安全を祈った。ここはパワースポットとのことだが、旅の安全へのパワーの掛け方は知らないが、旅の最後までの安全を祈った。
 帰りは、「女坂」を下って、男坂の階段の下に出て、中社参拝を終えた。
 参拝している間に、何人かいた参拝客はもう宿坊に入ってしまったのか、私ひとり、中社の厳かな雰囲気に包まれていた。

 まもなく日没だ。今日は走行距離こそ長くはなかったが、色々と回り、厄介な道を走ったせいか、体も気持ちも、ゆっくりと休憩したい気持ちになっていた。
 午後5時半、「ジル」のダイネットで、コーヒーを飲みながら、ポテトチップスを食べて、休憩した。キャンピングカーのダイネットで寛げる雰囲気を、改めて、ものすごく有難いものだと感じた。

 ふと気付いたのは、「ジル」の周囲に音がしない。静かだ。クルマの音も人の声も、鳥の鳴く声も、何も聞こえない。静かだ。戸隠神社の中社の前の厳粛な空気が漂っているのか、まったく静かだ。
 ちょうど今、「東京2020オリンピック ※」の開会式が放送されているので、そのせいもあるかもしれないが、いずれにせよ、今、静寂の中だ。

 ※「東京2020(ニーゼロニーゼロ)オリンピック競技大会」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受け、2020年夏の開催から1年延期して翌年の7月23日から8月8日までの17日間の開催になった。大会延期により開催年は変わったが「東京2020」の名称の変更はなかった。