悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅
■旅の3日目:開田高原⇒道の駅「白馬」(長野県北安曇郡白馬村)
【今日の走ったルート】 開田高原から御岳山と乗鞍岳の間を抜けて高山へ。高山は市街を走っただけで東に向かい、安房トンネルを抜けて、上高地に通じる釜トンネルの入口の前を通過して白骨温泉(しらほねおんせん)へ。湯につかったあとは安曇野、木崎湖、青木湖、そして道の駅「白馬」で車中泊。
【この日の忘れられない出来事】 釜トンネルの入口を通過して松本盆地に下ってゆく時、そこまでの山岳地帯を走り続けた疲れを覚え、目の前の案内標識に釣られて白骨温泉に向かったものの、そこまでの上りがきつく、疲れがピークに。それらを癒してくれたのは、川の畔の少し青色の温泉だった。
【旅の内容】 女性の声で目が覚めた。それは、トイレの横の自販機が発する声で、今、早朝の5時だ。
昨夜、このパーキングに入ったときは他のクルマはなく、「ジル」1台のみだった。駐車する場所は、トイレに近い場所が適しているが、といって、すぐ横では、トイレを使うクルマが夜間に入ってきたときのエンジン音やドアを閉める音が睡眠の邪魔になるため、数台分の駐車スペースを空けて停めていた。
バンクベッドの小窓から外を覗いたところ、「ジル」とトイレの間に1台のクルマが停まっていたので、そのドライバーが自販機で何かを買ったので、自販機がしゃべったのだろう。そのクルマにはもう、誰もいなかった。
この日の朝食も、ホットサンドにコーヒーと牛乳、そしてバナナだ。
卵焼きの上に、缶詰の秋刀魚(さんま)の蒲焼を乗せたホットサンドは実に美味かった。これはヒットだ。帰宅した際には妻に教えよう。
そしてバナナは即、エネルギーに変わるため、少なくとも午前中はこれでOKだ。
外は霧。待望の御嶽山は今日も見えないのだろうと思いながら、今日のルートを考えた。
まずは、昨日も行った「柳又ビューポイント」行って、そこから先は、御嶽山と乗鞍岳の間を走り、ひょっとしたら野麦峠に行くかもしれないし、白骨温泉につかりたい。そんなルートを考えながら、スマホで「日本道路交通情報センター」にアクセスして、通行止めの有無を確認したところ、問題はなかった。
旅の初日のR152が通行止めだったので、このように、計画した今日のルートの状況をネットで慎重に調べることを「出発前のルーティーン」にしよう。
そうそう、開田高原の広報アナウンスの放送が6時にスピーカーから流れ始めた。私の地元では7時なのだが、開田高原には多くの牧場があり、ここ住人の朝は早いようだ。
昨夜は3時間以上もビデオを見たので、今朝、サブバッテリーの充電残量を確認したところ、問題のない緑ライトが点灯し、電圧は12.4V、充電率は100%だった。
実は、この旅の前に、サブバッテリーの充電残量を定量的に把握したかったため、DIYで、電圧計を取り付けた。そのため、「ジル」に装備されていた赤と緑のライトの定性的な電圧確認方法とダブルで把握できるようになった。
朝食後、以下のチェック項目について、指差し確認を行って出発した。
・バンクベッドの左右の小窓は閉まっているか。
・ダイネットの左右の窓は閉まっているか。(左側のスライド窓は必要に応じて開けていてもOK)
・天井の換気扇のスイッチはOFFになっているか、ルーフベントは閉まっているか。(必要に応じて開いていてもOK)
・テーブルの上にモノを置いたままになっていないか。
・インバータースイッチはOFFになっているか(走行中に100Vコンセントを使用するならばON)
・コントロールパネルは全てOFFになっているか。
・冷蔵庫のロックは掛かっているか。
・マルチルームの窓は閉まっているか、ドアはロックしたか。
・キッチンの前の窓は閉まっているか。
・キッチンの全ての引き出しのストッパーを掛けているか。
・エントランスはロックしたか、ステップを収納したか。
この紀行文を執筆している今、この旅から既に3年も経過しているが、「ジル」を走らせる前の上記の「指差し確認」から「目視チェック」になった。
しかし、時々、チェックが不十分なときがあり、特に忘れがちなのが、キッチンの引き出しのストッパーの掛け忘れで、ブレーキを踏んだ時に、引き出しが飛び出てしまう。なお、床には落下しない。その時は、「ジル」を路肩に停めて、またやってしまったと思いながら、引き出しのストッパーを掛けている。
車中泊したパーキングをあとに、R361から少し外れる「柳又ビューポイント」に行ったが、御嶽山は霧で見えなかった。昨夜、ネットで調べたここからの眺望は、手前の谷から続く高原、その先に御岳山が見える絶景だった。どうしてもその景色を見たかったが、残念だった。
その風景の中を走った先でR361に合流した。ところが、そこからは御嶽山が見えている。それならば、先ほどのビューポイントからも見えるのではと思い、Uターンして戻ったが、なぜか霧で見えないままだった。谷川と霧の発生に何らかの関係があるのかもしれない。
そこには、望遠レンズをセットしたカメラを持った年輩の男性がいて、同じ目的だったこともあり、すぐに会話が始まった。
名古屋出身という彼は、私と同様、セカンドライフを送っていて、信じられない話をしてくれた。それは、彼が定年退職を迎える直前に、彼の上司が勝手に退職の延長手続きをしていて、定年退職なのに、退職届を提出して、セカンドライフを始めたという。妻はまだ働いているので、今日中に帰らなければならないとのことで、しかし、どうしても御嶽山を撮りたいため、霧が晴れるまで待つと言う。
そうだった私も少しの間、会話しながら待ったが、霧は一向に晴れず、雲は飛ばず・・・、もう待ちきれなくなり、私は出発することにした。お元気で。
開田高原から、岐阜県との県境の長峰峠までのR361は、御嶽山と乗鞍岳の鞍部を走る。そこは緩やかな勾配で、思いの外、走り易い道だった。このエリアには霧はなく、晴れた快適なドライブになった。所々で、御嶽山や乗鞍岳は見えるが、構図的に、写真撮影の対象ではなかった。先ほどのビューポイントからの景色は今頃、どうなっているのかと思いながら、長峰峠に向かっていった。
この左右の日本百名山には、それぞれに思い出がある。
まずは、左側の車窓から見える御岳山だが、30歳の頃、友人たちとスキーに行ったことがある。
ゲレンデの中腹までクルマで行って、そこからリフトに乗って、最長7,000mもあるゲレンデの上半分で滑った。昼食後はゲレンデの下半分で滑ったものの、シーズンの終わり頃の水分を多く含む雪のため滑りにくく、スキー場の麓からリフトを乗り継いで、最高点まで戻ったことを憶えている。
この日は少し曇っていて、ゲレンデからの眺望がなかったことが影響したのか、一度きりのゲレンデになってしまった。スキーは、晴れた日に滑ると次につながるのだろう。
一方の右側の車窓から見える乗鞍岳は、幾つもの山頂を持つ山体の総称で、そのひとつの摩利支天岳の山頂には国立天文台の「乗鞍コロナ観測所」があり、その閉鎖の直前に取材をしたことがある。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅 作家名:静岡のとみちゃん