悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅
3泊4日程度のキャンプツーリングの行き先は信州や飛騨、そしてびわ湖あたりで、そんなにロングツーリングは行っていなかった。それでも最後のものは、東日本大震災(3.11)直後のGWで被災地を走ったツーリングだった。まずは信州と越後を回り、福島県の浜通りに入り、そこから海岸沿いに、2輪ならではの小回りを活かしながら被災地を見て回り、最後は、石巻専修大学内のボランティアのテント村にテントを張らせて頂いた。このツーリングでは、松本市内のキャンプ場、猪苗代湖のキャンプ場でもテントを張った。ただ、かなり激しい降雨に見舞われた宇都宮ではビジネスホテルを使った。
今、ビッグスクーターがキャンピングカーの「ジル」に替わり、テントが「ジル」のダイネットやバンクベッドになり、形は変わったが、まだまだ続くセカンドライフ、日本中の車窓風景を味わって、これからも車中泊でお世話になる道の駅などが増えてゆくことだろう。そして、同じ場所でも異なった季節の情景を味わってみたいものだ。
2輪の「キャンプツーリング」から4輪の「キャンピングカーの旅」の話に戻そう。
道の駅「南アルプスむら長谷」から、ほど近くの「高遠城址公園」に向かった。
桜の花見以外は来場者がいないのか、城址を訪れたのは、自転車の男性と私の二人だけだった。
駐車場は無人で、売店は閉まっていた。城址の大きな地図が載った看板があり、その写真を撮った。無人の入口ゲートは開いており、そこからは、撮った写真をガイドマップにしながら、城址公園内を歩いた。本丸エリアにたどりついたが何もなく、説明文が載った看板を読んで終わった。結局、ぶらぶらと歩き、高遠の町並みが見えたので写真を撮っただけで終わった。
観光地は適した季節に訪れるべきだと身を持って感じた城址訪問になったが、いつかは満開の桜の花を見たいものだ。
高遠から杖突峠までは南アルプスの北端の高原地帯だ。そこを走るR152は緩やかな勾配で、Rの大きなカーブが続き、運転しやすい上り道だった。バイクで走った時の爽快感を思い出した。
やがて標高1,247mの杖突峠を越し、その先の「峠の茶屋」の駐車場に「ジル」を停めた。ここには有料の展望台があり、諏訪盆地が一望でき、八ヶ岳連峰に霧ヶ峰などが見渡せるようだ。
ちょうど昼食時間になったので、レンチン赤飯にインスタント味噌汁、おかずは鮎の甘露煮、食後はコーヒー、名付けて「鮎の甘露煮定食(白米を赤飯に変更)、コーヒー付き」、美味しく頂いた。
峠から茅野への下りは、糸魚川静岡構造線が通過している関係で断層崖となっており、ジグザグの急坂を一気に下ることになった。その途中で、視界が開けた場所があり、路肩に「ジル」を停めて、乗ったままで写真を撮った。あとでその写真を見ると、諏訪湖は見えなかったが、足元の茅野市から蓼科山、そして北八ヶ岳の夏の山容が写っていた。
さらに下り、道を主人公にしたドラマが書けそうな「酷道152」に別れを告げて、R20に合流し、諏訪湖を目指した。
茅野市に入ってからすぐのGSに入った。軽油1リットルが136円なので、これまでのGSより安価だったので満タンにした。ところが、次のGSでは131円だった。
私もそうだが、地元の人は、どこのGSが最も安価なのかを知っているが、旅をしている人にとっては、それが分からない。旅人をサポートするような何か情報があれば良いのだが・・・、切にそう思う。
諏訪湖を眺めたくて湖岸道路を、左回りで周回を始めた。普通車より「ジル」の運転席は高いが、それでも、湖面がぎりぎり見えない高さの土手が続き、少し残念だった。周回道路から湖側に入る道があればちょっと寄って眺めたり、土手が途切れる一瞬で湖側を見たりという繰り返しになった。
ただ、湖岸には幾つものマリーナがあり、公園もあり、反対側には観光ホテルが立ち並び、つい先ほどまで走っていた南アルプスの北端エリアと比較するならば、これぞ、「ザ・観光地」の雰囲気だった。
暫く走ると湖の東岸から北岸に至り、湖岸道路と湖の間は遊歩道になり、湖面が見え始めた。そのあたりの駐車場に「ジル」を停めて、湖の畔まで歩いた。
そこから、湖の風景の写真を撮っていると、大きな数字が湖面から垂直に掲げられていた。そしてブイが並んでレーンが形成されていて、その湖側を見ると、レーンに沿った長い防波堤もあり、多分そこは漕艇場なのだろう。そう思いながら、ネットで調べると「下諏訪ローイングパーク」ということ場所で、艇庫も含めて素晴らしく整備された漕艇場だった。
ここまで見てきた湖岸の風景から、南岸の上諏訪は観光地で、北岸の下諏訪はスポーツと博物館や美術館がある文化のエリアのように、何となく区分できそうだ。
そういえば、西岸には釜口水門(かまぐちすいもん)があり、そこは、湖からただひとつ流出する河川の天竜川の源流ポイントだ。そこの水量を見ていると、諏訪湖が干上がってしまうのではと心配になるほどで、もちろん、そうならないように水門が制御しているのだろう。
その一方、趣味のパラモーターで「空の散歩」を楽しんでいる静岡県の天竜川の河口付近の川幅は1kmもあり、夥しい水量が遠州灘に流れ込んでいる。
釜口水門から流出する水量と天竜川の河口の水量は著しく異なるため、天竜川に流れ込む支流の数を調べた結果、南アルプスや中央アルプスからの支流が約300もあり、その流域面積の広さは思った以上の規模で、改めて、天竜川についての私の認識レベルの低さが分かった。
次回は、諏訪湖一周約16kmを時速4~5kmのゆっくりとした速さで歩いて、周囲の色々な場所に立ち寄りながら、諏訪湖を体感したい。加えて、湖岸からかなり離れるが、諏訪大社4社を下社の秋宮・春宮、そして上社の前宮・本宮という正しい順番で巡り、いつまでも元気なセカンドライフが続くことを祈願したい。
諏訪湖をあとに、R20に戻ると道は上り坂になった。塩尻峠(標高1,012m、中央分水嶺の峠のひとつ)まではかなりの勾配だが、ディーゼルターボエンジンの「ジル」はスムーズに上っていった。
峠を通過してからは、道の駅「小坂田公園」があったので立ち寄ったところ、駅舎が改修中で、今はパーキングのみだったので、すぐに退出し、塩尻市街に下っていった。
今夜の車中泊の場所は何となく、北アルプス山麓の白馬あたりかと思ってはいたが、塩尻から北上せず、南下してしまった。その理由は、ひとつの風景写真を思い出したことだった。
それは、山頂付近が少し冠雪した御嶽山(おんたけさん)の麓の開田高原(かいだこうげん)で放牧された木曽馬か乳牛が草を食んでいる風景で、以前から、その長閑な様子が気に入っていた。
塩尻からはR19で南下すれば、その場所はそれほど遠くない。じゃあ行ってみようと、かなり簡単に決めてしまった。
きっちりと事前に決めた旅のルートもない私の「キャンピングカーの旅」、行きたい場所があれば、そこに向かう。それでよい。改めて、キャンピングカーの機動力を感じた瞬間だった。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:⑪信州の旅 作家名:静岡のとみちゃん