破滅に導くサイボーグ
「ロボット兵士であれば、死をも恐れない」
という感覚である。
「特に、天皇陛下のために、死というのも恐れない」
ということであれば、そこでは、
「人間をロボット化するということは、必要悪なのかも知れない」
ということであった。
ただ。その中に、
「カプグラ症候群」
のようなものを仕掛けることで、敵兵に対しての憎しみを消さないということを考えるのだった。
ただ、
「この場合は、ロボットやアンドロイドではなく、改造人間に近いもので、脳を強靭な身体に移植する」
というものであり、教授の危惧としては、
「本当にサイボーグとなった場合に、完全に恐怖というものを取り除いた形で、相手に立ち向かうことができるのだろうか?」
ということであった。
確かに、人間に比べれば、比べ物にならないくらいの強靭な肉体ではあるが、脳の中身は、普通の人間なのだ。
自分の身体を。本当は、
「持てあましているのではないか?」
と思われるほどであり、それが、教授には難しいところであった。
サイボーグということであれば、その後のとぼっと開発における。
「フレーム問題」
であったり、
「ロボット工学三原則」
というものは存在しない。
あくまでも、それは、
「人工知能」
というものが問題なのだ。
ただ、これのもう一つの問題として、
「拒否反応が起きないか?」
ということであった。
内臓移植などの一番の問題は、
「拒否反応」
が起こるということが問題だった。
そして、もう一つの問題は、博士は。
「戦争が終われば、恒久平和の時代がやってくる」
と思っていた。
「八紘一宇」
というスローガンである。
そのための膿を出すのが、今回の世界大戦であり、そのための犠牲はある程度しょうがないとも思っていた。
そうなると、
「戦争のために作られたサイボーグに、良心があったとすれば、集団自決のようなことが起こりはしないか?」
という問題だった。
しかも、この村の特性で、
「時間が他の人の倍の速度で進んでいく」
ということで、戦争が終われば、それが却って、本人たちの危惧に繋がるのかも知れない。
そして、もっと一番怖いことを、教授は考えていた。
それが、
「人間ほど怖いものはない」
ということであり、戦争のためとはいえ、こんなさいぼー具を作り出すということは、はっきりいって、人間の罪である。
作り上げられたサイボーグは、その機能と頭の回転の速さから、
「自分は人間ではない」
と分かり、人間の愚かさと、怖さを同時に知ることになる。
「俺たちもあんな人間だったんだ」
と、サイボーグが考える世界。果たして待っているのは、そんな世界なのだろうか?
( 完 )
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作品名:破滅に導くサイボーグ 作家名:森本晃次