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ススキノ レイ
ススキノ レイ
novelistID. 70663
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ウィタセクスアリスー言の葉の刃

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 もしや自分のものにはできない相手を、いっそ憎む、手に入らないものはそもそも欲しくないものだ、嫌いなものだ、と私が何かを諦めるときに使う手段みたいなものなの?わらわのものにならぬならいっそ殺してその首、この銀の盆にのせて共に踊ってくれようか。否、先生が憎むほど私に執着してるわけないのは私がよくわかってます。私がサロメのようにいっそ先生を殺したがっていたか?それはないですよ。だって私が殺したかったのは私自身ですから。
 私は当時諦念と自罰傾向にあったから、先生が殺してくれたらいいくらいに思っていたかも。ていうか、奥さんに殺されても文句はない、位の覚悟はしていましたよ。でも先生は殺したいほど私を愛していないし、それより生かさず殺さず、楽しみ続ければそれが一番よかったんでしょう。私はあんなに先生を愛していたけれど。
 言葉の刃で生殺しにされるくらいなら、いっそ鋼の刃で頸動脈を切り裂いてくれればよかったのよ。先生の愛読書、漱石の「こころ」の中で己の血しぶきで唐紙を染めて自殺した友人Kのように。しかしあれはこれみよがしでめちゃくちゃ迷惑な自殺の仕方ですよね。その部屋って下宿ですからね。人んち事故物件にしちゃって。
 まあ、私もあてつけがましい自殺の方法はよく考えてはいましたよ。あからさまなのはダメで当てつけたい本人にだけ後からじんわりわかるような事故死にしか見えないような死に方とかね。でもね、先生はいつかどこかで「子供が死んだときくらいしか涙はでないだろう」って言ってたし、ましてや私が死んだらむしろ安心されそうですよ。当時の本音を言えば、私の死は悲しんでもらえないのだな、とちょっと寂しかったんですけど。だから自殺なんかしないでしぶとく生き延びたんですよ。
 過去の自分に言ってやりたいですよ、この男はあなたに好意を持っているかもしれないけど、愛してはいないし本当にあなたを弄んでいるから、と。あなたは射精のための道具にされているだけだから、と。だから、好きな人に抱かれても気持ちが満たされないんだって。
 これで私が性的快楽を得られるのならばまだ救われるのですが、こんな年に2,3回会うだけじゃ毎度初回に逆戻りのような苦痛を味わうだけです。それでも、先生を愛していた私は苦痛でもいいから先生と体を重ねたかったんです。
 
 あげくに情事の会話でもっとひどいのが先生が私の足を抱えて腰動かしながらニヤッと見下ろして言ったこのセリフ。
 「ねえ、誰かに強姦されてみたいと思う?それとも、何人もの男に替わるがわるヤられてみたい?」
 なんちゅーことを言うの。ほんとドSですね。そしてエロすぎます。これってどう答えればいいの? 頭まっしろになって対応できないって。今だったら気の利いた返しをできるんですかねえ。しかし「はい、強姦されてみたいです」とでも答えようものなら、「そうか、じゃあ今からそうしてやろう」なんて言われそうです。
 私はネクタイか何かで目隠しをされ「お前はこれから誰かに強姦されるんだ。本気で叫んで抵抗してみろ」とか言われて、不意打ちで押し倒され、抗ってみるも体重かけてのしかかられ「ほら、男の力にはかなわないだろう」と両手を頭の上でひとまとめにして押さえつけながら片手で乳房をわしづかみにされる。抵抗を試み、体をひねって抜け出そうとしたところで今度は腰をつかんでうつぶせにされ、両手首をつかまれて後ろに引っ張られ、両腕の自由を奪われた状態で後ろから…なんて展開になりそうですよ。複数男編はちょっと難しいですが。
 だいたい先生は、私が他の男たちに凌辱される姿を見たいんですか?でもその状況って考えたらかなりやばいですよ。そういう場合、居合わせた彼氏は大概ボコボコにされて私がヤられるのを見せつけられたあげく殺されますよ。
 ああ、金で人を雇ってそういう状況を作ることはできますね。例えば、ある日私が路上で拉致され廃ビルの地下駐車場あたりに連れてこられる。ボンデージ用テープで後ろ手に縛られ、さるぐつわと目隠しをされている私は乱暴に車から引きずりだされる。私の目隠しとさるぐつわが切り落とされると目の前にむき出しのナイフを持った男がにやにやしながら立っている。もう一人の男がそこにある三脚にスマホを取り付け調整している。ナイフを持つ男Aが「悪いが、お前をマワしてやれ、と言われている。抵抗したら殺していいともな」とナイフの切っ先で首筋をひっかく。紙で指先を切ったようなかすかに鋭い痛みがあり、白いブラウスに滴った血がにじむ。これは相当手入れされた切れ味のいい刃だ。男Aは狂気の宿る目で私の血の付いた刃を舐る。やばいなこいつ。「依頼人は誰?」「それは言えない、ていうか、俺らに指示したのは本人じゃないからわからん」「依頼人はどこで見てるのよ」「会員専用ネット配信をみてんじゃねえのか」「このカメラは」「ああ、同時配信だな。B、準備はいいか」スマホの男Bが答える。「ういーっす。てかもう録画開始してますんで」そして男Aは私の手を拘束していたテープを切り、私を捕まえていた男Cに「腕を押さえとけ」と命じる。羽交い絞めにされた私に、にやりと口の端を吊り上げ言う。「いくらでも叫んでいいからな。ここは誰も来ない」彼は鋭いナイフで私のブラウスのボタンの糸を切り、切っ先で左右に払うと、ブラも切り落とした。冷たい金属が胸の先端に触れた反射で乳首が尖る。「どうした?感じるのか?乳首が勃ってるぜ」わずかに刃が滑った胸の皮膚から鮮血がにじむ。本当によく切れる。狂気の男はこの刃で一体何を?サド侯爵の「ソドムの120日」を思い出す。国中から集めた美しい少年少女を高位の僧侶や貴族が隔絶された城で暴虐の限りを尽くしてむさぼり尽くすという、収監されたサド侯爵が牢屋の中で長い巻紙に書き上げたという物語。気の狂った奴らはついにヴァギナとアヌスをつなげるような所業を…マヒしていた頭の中の霧が晴れ本当の恐怖が喉元にせりあがる。「いやあ、やめてーっ」絶叫虚しく私は彼らにあっという間に服を引きはがされ、全裸にむかれコンクリートの床に転がされる。男Aが足を抱え、男Bが乳房をつかみ、男Cが私の腕を押さえながら口に…
 うわー、怖っ。こんなことができるような度胸と金が先生になくてよかった。せいぜい妄想だけにとどめておいてください。ああ、そうか、ああいう言葉は私を盛り上げるというより自分が盛り上がるためですねえ。ドSだもんね。ほんとオモテの顔からは絶対想像がつかないダークサイドの闇の深さです。
 人から信頼され尊敬されるいい人で、みんなに好かれ仕事できるいい夫でお父さんで、生涯一人にしか愛の言葉を言わないくらい奥さんだけを愛して。だったら私が告白したって小娘の戯言なんか一蹴したらいいじゃない。「バカなことをいっちゃいけないよ、自分を大切にしなさい」と諭せばいいでしょうが。私よりはるかに大人なんだから。ふられれば私だって諦めますよ。でもふられなかった。お返事は「諾」。