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ススキノ レイ
ススキノ レイ
novelistID. 70663
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ウィタセクスアリスー言の葉の刃

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 まあ、私は勝手に「(君には申し訳ないが)遊びだった(とでもいうしかないだろう)」と拡大解釈してましたけど、それ本当に正直な答えだったんでしょう。そう、先生にとって私は遊ぶ対象以外の何ものでもないですよね。それで、私はどういう遊び相手なんですか。高級娼婦として扱われた気は全くしないのでお手頃価格のデリヘルですか?それとも場末のソープ嬢?ま、所詮私は先生の玩具だったんでしょうよ。愛していない人は愛人ですらないですものね。
 ただね、私その時思ったんですよね。将来自分の配偶者が浮気したとして、「遊びだった」とかぬかしたら、「やるんだったら真剣な恋愛をしろ、私はそれは仕方ないと思うから、別れてやるからその人を幸せにしろ。逆に遊びでセックスするようなやつとは私は金輪際やりたくないから別れる」って言ってやろう、と。あ、どっちみち別れちゃいますね、これ。
 
 あと私個人としては金で女を買う男とはかかわりあいたくないですね。だから周囲の男性に飲み会の時などにさりげなく質問したりしてました。とりあえず私が付き合った男はそういうのは無理、という人でしたが。
 今でこそ何らかの事情のある男性もいるだろうし、そういう商売は必要悪として昔からあってそれはそれで機能を果たしているし、ある程度年いくとめんどくさいからいっそ金で済ませてきてくれって思う場合もあるけど、二十歳前後のストイックな私は、性を金銭でやり取りすることに妙に強烈な嫌悪感がありました。前世で遊郭にでも売られてたんですかねえ。
 
 私は先生を好きだって何度か言ってますよね。たとえ先生が私に愛の言葉を返してくれなくても、例の制約で口にできないだけで、少しは私の気持ちを汲んでくれていると信じたがっていましたから。
 私が先生を好きなのは尊敬も含まれていたんですよ。でも先生は好きだって言ってきたからには何してもいいんだろ、位に思ってたんじゃないですか?先生にとってこんな都合のよいお手軽な女はいなかったでしょうよ。
 惚れてた私は先生に喜んでほしいから、私の体に満足してほしいから、要求にはほぼ全面的に応じてきましたけど、心には満たされない思いが常にありました。先生の言葉から愛をくみ取れなかったから。
 私と寝る時以外の先生は決してひどい男でもやばい奴でもないんですけどねえ。ホテル以外の場所で、普通にお話をしていれば至極まっとうなのに、ラブメイキングの場では別人格で。まあ家庭用の顔と浮気用の顔、使い分けるのはわかるけど、私に対してってそういうレベルじゃなかったでしょ。頭のねじが数本ふっとんでたでしょ。先生を知っている私の友達にこういう話をしたって絶対信じてもらえないと思うわ。
 私はそもそもあくまでも普通モードの先生に惚れたのであって、ダークモードじゃないんですけどね。あれか、そういう場面になるとタガが外れるってことですか?自宅ではタガを外してないわけでしょう?だからその抑圧の反動?私と寝るときにタガを外してその抑圧から解放されるわけ?私にとっては好きな人と一緒に過ごせる貴重な時間でも、先生にとっては常識ある大人を演じる抑圧から解放され性欲全開になれるまたとない機会?私は先生にとって隷属させ、なんでも要求できる、都合のいい女でっていうそれだけの価値だったんですか?って問い詰めたところで無意味ですね。先生が本音を答えるわけないですよね。私が愛想をつかして逃げ出さない程度にうまく言いくるめるんでしょうね。アンビバレントな私も本当の本音は知りたくもあり知りたくもなしだしね。

 あの頃の私にとって先生と会える時以外はすべて色褪せた時間だったんですよ。でも周囲にそれを気取られるわけにはいかないから私は常に全力で演技してきました。
 頭の中では先生との恋愛問題が半分を占めていましたが、残り50%の脳をフル稼働させて試験も受けたし仕事もしました。演技としてもっともらしい目的やら理由やらを公言してたとしても、人生に目標なんかありませんよ。本当は何がしたかったかといえば、先生と会いたかっただけです。先生と会いやすい職業はなんだろう、とか考えただけです。万が一子供ができても一人で養える給料を得られる職業はなんだろう、とかね。神様にお願いするとしたら「ほかに何もいらないから先生が欲しい」です。でもそれこそが逆立ちしたって金輪際手に入らない、手に入れてはいけないものですよ。
 私にとっての真に鮮やかに輝く時間は年に2.3回先生と会う時だけです。その時の一部始終を思い出しては胸をときめかせ、先生の指が私の体に触れた軌跡を辿り、先生が私の体の芯を満たす感覚を思い起こし、その度に液体で満たされた小さな袋を針で突いたかのように自分の体が浸潤してくるのを感じ、次に会えるまでの数か月をこの前の逢瀬を思い描いて、自分を慰めて待つしかないのです。
 家族や友達と温泉に行った時、明るい時間に一人でお湯に浸かると必ずいつも玄宗皇帝と楊貴妃が温泉で過ごした時の「温泉水滑らかにして凝脂を洗う」という長恨歌の一節を思いだします。先生が好きな井上?の「楊貴妃」にでてくるでしょう。先生がここにいてくれたらどんなに幸せだろうと思い、滑らかなお湯が私の肌を流れるのを先生の指で触れられているんだ、と想像して私は頭の中をとろけさせていました。無理だけど一度でいいから先生とどこかに行ってみたかった、とよく思いました。
 結局そういうことを何年も繰りかえし、でもほかの誰かを好きになることもできなくて、寝ても覚めても先生のことばっかり考えながら、私は膨大な色褪せた時間を過ごしてきたのです。恋愛にドはまりした典型的な症状ですね。こんな重症なのは後にも先にもこの時だけでしたよ。
 
 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、まあ知らないんでしょうけど、ベッドインしながら私に語る先生の言葉が
 「どう?まじめな君が今こうして俺に犯されてるんだ、ざまあみろ」って何?今思えばエロい発言ですよ。未だに覚えてるんだからよほど刺さったんでしょう。
 さらに私を貫きながら「どうだ、俺のおもちゃにされて」と意地悪そうに言いましたよね。これはどう返せばよかったんですか。正直言ってそんなこと言われてもわけわかりませんでした。
 空気読めなかった当時の私はマジ顔で「先生は私をおもちゃにしているの?」なんて聞いてしまって先生は言葉に詰まってたような気がしますが、KYですみません。「はい、ご主人様、私はあなたのおもちゃです、好きに弄んでください」とでも言えばよかったのでしょうか。
 ほんと、今にして思えば下半身に刺さるセリフですよ。「お前は今俺に犯されている」なんて言い方、コントロール下に置かれ生殺与奪の権を握られて喉元にナイフを突きつけられているような不穏な感じが大人なら興奮するかもですが、当時の私じゃ心に刺さるだけでした。好きな人になんでこんなことを言われるのだろう?って。
 
 今考えれば先生が単にドSだったってことなんでしょうね。でも普通モードの先生からそこまでのドSは想像つきませんでした。当時は私のこと好きではないの?なぜ憎悪を向けられてるみたいなこといわれるの?って思いましたよ。