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ススキノ レイ
ススキノ レイ
novelistID. 70663
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ウィタセクスアリスー言の葉の刃

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 「ああ、気持ちいい。よく締まるよ。こんな技どこで覚えたんだ?」
 あ、また墓穴を掘ったか。
 「先生が教えたんでしょ。お尻の穴をぎゅっと縮めてごらん、って」
 「そうだっけ」
 「あの頃そんなこと言われても余裕なかったですからね。精神的にも物理的にも。いっぱいいっぱいだと収縮させる余地もないじゃない」
 随分過激なことを言ってくる。昔はどうしたらいいかわからないって顔をしていたものだが。ああ、そうだ、結局そういう彼女を大人の女に変えていったのは俺なのだが。
 「ごめん、これ以上もうできそうもない」
 「かまわないですよ。勃っただけでもいいじゃない」
 俺は小さくなった性器を抜いて彼女の隣に横たわる。
 「こうしながらお話をしましょう」
 「そうだね」
 息を整えながら俺はつい昔の癖で無意識に煙草を探してしまってから、禁煙していたことを思い出した。
 「別れた後、どうしていたんだい?」
 「色々ありすぎて語りきれないので省略です」
 「あの後、例の人とは結婚はしたの?」
 「あの別れる時に話した人ですね。まさか、あんなのあてにしてませんよ。ただ付き合いはしばらく続いたかな。ややこしいんで中略。まあ、付き合ったり別れたりはそれなりにあって、最終的には結婚し、子供も産みましたよ。安心した?」
 「ああ、まあ。君には結婚して幸せになってほしいとずっと思っていた」
 「肩の荷が下りたんでしょう。私がずっと独身だったら自分のせいだと思ってしまうから。時間はかかりましたが私が曲がりなりにも結婚したってきいて、自分の責任が半減したって感じたでしょう」
 「まあ、たしかに否定はできないかもしれない」
 「先生は昔人生で一人の人にしか愛を告白しない、とか言ってたでしょう」
 「言ってたね」
 「そんなこと言ってられるの先生だけですよ。それってかなりレアケースですよ。告白してふられたらどうするんですか?詰んだら出家でもするしかないんですか?私は最初に決して結ばれない先生にその切り札使っちゃいましたから、その方針貫くわけにはいかなかったですよ。でも、誰かを好きになっても諸事情で結局別れることだってたくさんあるでしょう。それがなく初志貫徹できた人生だったなら先生はとても幸せでしたね」
 「その通りだと思うよ。君とも出会えたし」
 「それはけっこうなことです。先生は私がいなくなって寂しかったですか?」
 「ああ、俺の人生の特別な時間はこれで終わった、と思ったよ。でもこれでよかった、こうなるべきだった、と自分を納得させたね。特別が永遠に続いたら特別ではなくなる」
 「つまり私は先生にとってのスペシャルな時間を提供したと?」
 「そうだね」
 「それは先生にとってはエキストラ人生だったってことよね?十分に幸福な人生を確保した先生が、さらにオマケをゲットしたという。福引でスペシャルな時間という賞品を手に入れたようなものなんじゃないんですか」
 「君はオマケなんかじゃないよ」
 「だったら」
 彼女が身を起こし一呼吸おいて言う。
 「何が何でも絶対に手に入れたかった大事なものでしたか?」
 彼女は真剣な眼差しで俺を見つめた。
 
 俺はどうしても彼女を手に入れたかっただろうか?自問する。
 溌剌とした華やかなタイプではなかったが彼女には知的な美しさがあったし、読書家の彼女と話すことは面白く興味があった。興味津々で俺から知識を吸収しようとしている彼女は俺にとっても教えがいのある生徒だったから勉強以外の色々なことも教えたくなった。彼女が俺を好きになってくれてもちろんとても嬉しかった。性を教えるなんて教師冥利に尽きるじゃないか。リスクは承知の上でも据え膳を拒む気にはなれなかった。今風に言えばモテ期が来た、みたいなものだったか。ちょっと舞い上がっていたのは確かだ。こんなチャンスを逃す手はなかった。ただ、当時の俺が手にしていた幸福を何もかも捨ててまで彼女を手に入れようとまでは思っていない。それでも、俺は彼女の若い体に魅かれ、自分のものにしてみたい、彼女を味わってみたい、という衝動にかられたのは事実だった。
 
 「たとえ大事なものでも何が何でも手に入れようとするなんて、俺にはできないじゃないか」
 こんな質問にどう答えろというのだ。なんだか俺よりずっと若い彼女に完全にイニシアチブをとられている感じだ。
 彼女は半身を起こしてヘッドボードに枕をたてかけて寄りかかり、俺を見下ろすと
 「イエスかノーで答える質問なのに回避しましたね。今更かっこつけなくていいですよ。そんなことなかったでしょう。オマケですよ。私は福引の景品だった。まあ先生としては答えにくいでしょうけどね。どうしても先生を手に入れたかったのは私のほうでしたものね」彼女はそこでいったん言葉を切り、俺から目をそらした。
 
 俺はまたまずいことを言ってしまったか。彼女は何を言いたいんだ?彼女を傷つけまいと言葉を選んだつもりでもとうに見透かされていたか。かといってストレートなことは言いにくい。俺の性分として嘘も言えないのだが。何を言ったところで彼女は看破しそうだ。確かに彼女と関係を持てたのは彼女が俺に惚れてくれたからなのだが、俺だって口には出さないが彼女を愛おしいと思っている。一体どういえば彼女は納得してくれるのだ?いや、こういう関係に納得などあり得ないか。俺だってどうしたものかとずっと考えてはきたんだよ。君を不幸にしたいなんて思っていない。でも、結局俺では君を幸せにしてあげることはできない。そうわかっていても俺は君の声を聞けば、君の顔を見れば、どうしても君を求めてしまったのだが。10代の少女が自分を求めてくれて、拒める男がいるか?
 
 「いいんですよ、先生にとって私は福引の景品でした、ってことをちょっと再確認しただけ。人生福引大当たりでラッピングされた18歳の私が降ってきたってことでしょ」
 彼女はそこでおどけて見せたが目が笑っていない。困った。雲行きが怪しい。
 「結局男って体が欲しいけどあとはいらないんですよね」
 「そんなことはないよ、ずっと一緒に居たいから結婚し…」
 あ、まずい、禁句だ。
 「この国では結婚は一人としかできないんです。私みたいのはどうすんですか」
 彼女ににらまれた。当然だ。答えかたをしくじった。なんと答えよう?
 「いいですよ、答えようがないですよ。わかってます。私だって、男ってそういうもんだ、と納得させて生きてきたんですから。ほんとに露骨に言えば、ヴァギナに入って気持ちよく果てればそれでいいんでしょ。それって私である必要あった?もし私以外にも言い寄ってくる女がいたとして、友人AにもBにもヴァギナはついてるのよ。年齢が同じならヴァギナなんか同じようなもんでしょ。暗がりでやったらブスも美人も大差ないですよ」
 「いやいや、好みの女がいいに決まってるじゃないか。俺は君がよかったんだよ。君以外の女が声をかけてきても無理だ、欲情しないよ」
 「私は欲情の対象にはなったわけね」
 「第一君は俺のことを好きになってくれたじゃないか」
 「AちゃんやBちゃんも先生を好きだって言ってきたらどうすんの?」
 「申し訳ないがタイプじゃないから、と断るよ」