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二つの世界と同じ顔

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「どうも、その記憶喪失というのも、何か作られた記憶喪失のような気がするんです」
 というと、
「どういうことだい?」
 というと、その院長は、
「その男は、故意に記憶を失っていたということかな?」
 というので、
「はい、そういうことのようです」
 と答えると、
「君は、そのことを決して口外してはいけないよ」
 と言われた。
 彼も、そのことは分かっていたので、それ以上口外するつもりはなかったが、何か背筋に寒気が走ったのだ。
 院長は、それを聞いて、その医者が退室したそのタイミングで、誰かのところに電話を掛けていたようだ。
 その相手というのが、
「黒岩教授」
 だったのだ。
 黒岩教授はそれを聞いて、
「きっと、その人が、まるで催眠術にかかっているかのようだということかな?」
 と聞かれた院長は、
「そのような感じですね。彼が一言言っていたんですが、まるで、どこにでもいるような顔だったというんです」
「ほう」
 と、博士は、乗り気になり、
「それは、ロボットのような顔かな?」
 と聞くと、
「ええ、そうです、まるで、作られたかのような顔だと言っていたので、それが、どこにでもいる顔に見えたんだと思います」
 という。
 医者は、精神的な分野で、博士たちが研究している、同じ顔に成型するという心理学的な試験計画を知っているのだが、最初は、
「まさか、そんな状態だっただなんて」
 と思ったのだ。
「公共の福祉」
 とはいえ、人権であったり、この国の未来を考えると、あまりにも先に進みすぎているように思えた。
 確かに、
「ロボット開発」
 であったり、
「タイムマシンの開発」
 という、二代巨頭と呼ばれる研究に、
「同じ顔をした人たちが、どのように活躍する」
 ということになるのか。そのあたりが難しいところだと思うのだった。
「同じ顔をしている人が、今、この国にはたくさんいるんだろうな」
 と先生は感じたことで、今回の事件に、
「黒岩博士が絡んでいる」
 ということがすぐに分かったのだった。
 この医者は、黒岩博士からの依頼で、
「バーナム効果」
 と、
「同じ顔をした人間」
 というものの関係を調べていた。
 死刑囚を全員処刑しようと考えた時、医者は、誰にでも当てはまることを口にすることで、いろいろな、
「世界を二分するもの」
 という発想が生まれてきた。
 二分するものとして考えられるものが、
「ロボット工学を開発している国」
 と、
「タイムマシンを開発している国」
 との間でどのような発想があるか、考えてしまう。
 普通は、その両方の研究を、同時に行うというのが、国の考え方ではないだろうか。お互いに、その発想を共有できると思うからだ。
 しかし、実際には、そんなことはありえない。同じ国であればあるほど、お互いに、研究するということがうまく行かないだろう。
 それが、この国の体制であったり、他の世界の、
「日本という国」
 だったりするのだ。
 まったく違っているように思えるのは、自分たちが中にいるからで、表から見ると、似た者同士、
 だから、
「それぞれの国で、お互いを意識して、仮想敵国にしていた」
 などということは誰にも分からないだろう。
 同じ顔を作り上げて、片方の国に送ることで、分からなかった部分を見ることができる。それが、この国の、
「心理的な秘密兵器」
 ということであり、作戦でもあったのだ。
 この国に迫ってくる国というのが、
「次元を通り超えることとなる日本という国だ」
 ということは、こっちの世界では分かってはいるが、向こうの世界では分からないだろう。
 何といっても、向こうの世界では、すでに、タイムマシンを作り上げていて。ロボット工学も作っていた。
 それは、
「あちらの世界では実現不可能であるが、次元を超えたパラレルワールドであれば、実現可能なのだ」
 ということに辿り着いたからだ。
 こっちの世界では、
「同じ顔の人を作る」
 ということまでしか分かっていないが、これが未来において、
「日本を追い越す」
 ということになる。
 というのである。
 今この国を救えるのは、
「誰だというのだろうか?」
 それを考えると、島から流れ着いた男であった。
 その顔は、
「見覚えがあるのだが、誰なのか、初めて見る顔だ」
 ということで、
「あれ? これもどこかで?」
 と思ったことであった。
 それがすぐには分からなかったが、その時に感じたのが、
「辻褄を合せっること」
 だったのだ。
 そう、辻褄さえ合わせれば、それがいかにうまくいくかということであるが、そのような現象を、
「デジャブ」
 というのだ。
「デジャブ」
 と、
「バーナム効果」
 まったく別物であるが、これこそ、
「ロボット工学」
 と、
「タイムマシン」
 との違うを感じるようになると、それこそ、
「同じ顔の人物として作ったのが、大門博士だということだ」
 一体、大門博士は、どこにいるのであろうか?
 時代が進むと、
「死刑執行」
 と、
「安楽死」
 という問題が、解決される時がやってくるに違いない。

                 (  完  )

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作品名:二つの世界と同じ顔 作家名:森本晃次