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三つ巴の恐怖症

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「どっちが、どっちに対しての優劣性があるということは言えないのだが、この三つが、三つ巴になっている状態が、今の社会じゃないかと思うんだよ。そして、見かけでは、世の中がつりあっているように見えるわけだろう。つまりは、この三すくみ、そして三つ巴の関係というのは、まるで、昔あった、核の抑止力と呼ばれるものと似ているだろう? つまりは、諸刃の剣ということさ。これらのどれかがバランスを崩すと、世の中がひっくり返ることになる。それがならないでバランスが取れているというのは、本当に奇跡だと思うんだ。人間には、誰にも見えない奇跡のようなものがあり、それは、実は錯覚であって、奇跡というものが本当にないものではないか?」
 と博士はいうのだった。
「この三人が、三すくみということですか?」
 と助手がいうと、いちかが、一言呟いた。
「私たちが、ステルスを作れるということ?」
 というではないか。
 博士は一瞬目を見張ったが、落ち着きをいち早く取り戻して、
「ああ、そうだよ。ステルスなんだよ。見えているようで見えない。これが、今の軍事兵器の主流になtっているものさ」
 というと、いちかは、
「それが、サイバー攻撃と一緒になるのよね」
 というではないか。
 それを聞いていて、
「彼女には予知能力があるわけではなく、頭の回転が極端に早いんだ」
 ということが分かった。
 恐怖症を持っている人は、その反面天才的なものを持っているわけだが、いちかは、その予知能力に近い、頭の回転の速さだ」
 と感じたのだ。
 だから、逆に、
「天才は、どこかに精神的な疾患を持っている人が多いのではないか?」
 という説もあるが、それに間違いないのではないだろうか?
 博士は、ここでステルスの強力な武器を作り、それを使ってクーデターをもくろんでいる。
 そして、それは今まで、
「日本が敗戦したということを、未来の人間に残したくないという政府の勝手すぎる理由で、世の中がおかしくなっていくのを、何とか食い止めようするつのが、このクーデターであった。
「7361部隊の残党が作ったこの施設で、それを行おうというのは、実に皮肉なものだといえるだろう」
 と、博士は、助手に言ったのだ。
 その計画は。もちろん、助手も乗っかっていた。
 いや、むしろ積極的なのは、
「助手の方かも知れない」
 と博士は考えていた。
 いちかたちは、博士の考えを分かったようだ、あいりの方も、分かってみれば協力しようという気持ちになった。それによって、自分のマイナス部分が消え去るということを、博士が保証してくれたからだ。
 この計画は見事に成功し、うまく、政府のくだらない野望を打ち砕き、その功績からか、博士が、次期首相ということに決定していた。
 助手も、文部科学大臣として入閣が確定していたが、このクーデターが起こったことは、表には出ていない。
「いきなり出てきた博士がいきなり、首相に就任」
 ということで、
「ヒトラーの再来」
 と言った人がいたが、それが、元政府の人間であるから、説得力があるはずなどない。
 それを思うと、いちかたちは、それぞれの将来を保証された。
 いちかは、頭の回転のよさと、科学的なことが好きだということで、
「博士の後ろを追いかけることになった」
 親もビックリのこの展開だが、さすがに、
「この日本をひっくり返した功労者」
 であるということは、誰も知らない。
 えいりは、自分から目立つことは嫌いだったので、小説を書くことで、その才能を生かす道を選び、ベストセラー作家にはなったが、
「その正体は、誰も知らない」
 ということで有名だったのだ。
 そして、いずれ唯は、助手と結婚して、幸せになることになるのだが、彼女は、助手が、
「実は、731部隊の残党だった人の子孫である」
 ということを知らない。
 それを知っているのは、首相になった、博士だけだったのだ……。

                 (  完  )

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作品名:三つ巴の恐怖症 作家名:森本晃次