猫の女王
「おい、シロアシ、いろいろな情報ありがとう。『みんな逃げて棲(す)み家(か)でぼろ被って震えているって。だから争そっても無駄だから、死者が出ないうちに降伏式典をおこないたい』と廃業中の銀行にいるクロと片耳に報告してくれ」
灰猫の八田が、ぞくぞくと集まってくる日ノ元の猫たちを、庭の垣根のむこうに眺めながら告げる。
米田トメも鼻黒も、それでいいとうなずく。
庭の景色に、赤い夕日が斜めに射している。
シロアシが庭に跳びだし、四本の白い足首で垣根を飛びこえ、走っていく。
ほとんど黒毛と思えるその背中に夕日が照った。