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ステルスの村

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「家族でなければ知らないようなことを、臭わすことで、話の信憑性を持たせよう」
 という考えのようだった。
 つまりは、それは、自分たちにもリスクのあることである。自分にしても、まわりを巻き込んでいるわけなので、これが問題になれば、大変なことになる。
 そうなると、まずは、
「父親の不正的なことを辞めさせなければいけない」
 ということになる。
 その方法として、子供だましかも知れないが、
「誘拐騒動を起こし、神隠しがある村」
 ということを印象付けようと考えたのだ。
 しかし、これには、もう一つの
「理由というものがあった」
 それは、自分たちが、
「父親の不正」
 というものを暴くにあたって、
「父親を裏切った」
 という、後ろ向きの気持ちをもたないように、ある意味、今までの平和な村や家庭内において、こういう事件を引き起こせば、少しは、
「目を覚ましてくれるかも知れない」
 と考えるのだった。
 それを思うと、
「俺たちの考えが、いかに真剣かということを、まずは、自分たちで知っておく必要がある」
 ということで、協力してくれた仲間は、その親が、父親同士の悪だくみに、加担しているのだった。
 だから、それをわかっている息子たちは、自分たちが、
「狂言誘拐」
 というか、
「狂言神隠し」
 を演じることで、
「自分たちの正当性」
 を自分たちに植え付け、その覚悟を示すことで、親たちの目を覚まさせてあげたいと思っていた。
 しかも、誰かを傷つけたわけでもないので、
「警察に捕まってっも、俺たちはまだ未成年じゃないか?」
 ということ、さらに、
「誰も傷つけていない」
 ということになるが、それでも、
「親を欺く」
 ということに後ろめたさを感じている人もいた。
「これでは、大人たちのやっていることと同じではないか?」
 ということから、
「これも、内部リークのようなものが起こっても、無理もない」
 ということになってきたのだった。
 そして、その間、
「消えた人たちはどこにいたのか?」
 というのは、これは、誰も知らなかったのだが、実はこの村の分身というような村が、他の土地に存在していた。
 実に近い土地ではあったのだが、あまりにもこの村が閉鎖的であったことと、
「自分たちのような村が他には存在しない」
 という、一種の驕りのようなものがあった。
 その感覚から、誰にも知られない。いわゆる、
「石ころのような存在の村」
 といってもいいだろう。
 ただ、この村の先祖は、元々は自分たちの村を出て行った人が起こしたところだった。昔から、石ころを自覚し、そのおかげで、自分たちの存在を知られることがなかった。
 しかし、今この村は、尊属の危機に見舞われていた。労働力の不足であった。
 そう、いわゆる、
「少子高齢化」
 ということで、自給自足であれば、その問題は、一番大きくのしかかってくるというものだ。
 そのせいもあって、この村に襲い掛かった現実は、
「いずれは、自分たちの村に襲い掛かるものだ」
 ということだ。
 彼らはその憂いのために、分身の村を助けることを考えた。男たちは、村のための労働力となり、さらには、言い方は悪いが、村の娘の、
「種馬」
 となったのだ。
 この村では、若い男が極端に少ない。どうやら、女性しか生まれないというようなことだったようだ。
 それは、
「自分たちの村だけの純血を守ろうとした結果ではないか?」
 ということであったが、その村の学者の話では、その言葉に間違いはなさそうだったのだ。
 だからこそ、
「これは、俺たちの村でも、今後言えることだ」
 ということで、女性は、数は少なかったが、この村の男性と契りを結び、他の土地の血を入れることを敢えて行ったのだ。
 村に帰ると、さすがに最初は、こんなことをいきなり言えば、大問題になるということは分かっていたので、いつ切り出すか?
 というのも問題だった。
 女たちが、いきなり、子を宿したとなると、そこで問題になるのは分かっていることだった。その前に、失踪した者同士が結婚する必要がある。
 元々、この村では、恋愛結婚という風習はなかったので、恋愛感情による結婚というものはなかった。
「許嫁」
 というものもなかったので、この結婚には、何ら違和感はなかったのだ。
 そして、子供が生まれて、その子が、いずれはこの村の労働力になる。さらに、昔からの伝説として、
「この村の純血が、強力な労働力になるが、血が混じれば、頭のいい子供が生まれる」
 ということを仮説として挙げた学者がいた。
 この計画は、そもそも、この学者の説から、来たものだった。
 その人は、最初から、この村の出身でありながら、一人だけ、まったく違う目線でいた。
 しかし、
「村を憂いている」
 という気持ちに変わりはなく、そのおかげで、分身の村の存在も最初から見えていたのだ。
「俺のこの考えがこの村と、分身の村を救うことができるかも知れない」
 と考えた、行方不明計画。成功すれば、一挙に二つの村を救うことができる。
 そこから、また新たな村が出来上がってきた。
 その村は、またここの分身でもあった。
 その村の発展は、日本という国においては、まったくの石ころであり、次第に、そんな村が次第に増えていく。
 それが、
「ステルスの村」
 ということで、一つの独立国の様相を呈してくる。
 そう、
「日本の土地が買われている」
 ということを危惧したこの学者が、
「食い止めることはできないが、何とか対抗措置を」
 ということで計画されたことであった。
 それが、この失踪計画であり、結果、数十年度、この学者は、
「ノーベル平和賞」
 を受賞することになるのだが、それが、彼の計画の結果であったということを、示しておこう……。

                 (  完  )
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作品名:ステルスの村 作家名:森本晃次