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まもなく時効

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漣「おばあちゃんの病院に持って行こうと箪笥を整理してたら写真が出てき
 た」
文子「写真がどうしたのよ」
漣「昭和初期マニアの俺にはたまらないアナログ写真の水着の女性」
文子「あんた大正、昭和初期のことには妙に詳しいのよね」
漣「とにかくその水着の女性がすごい美人なんだよ」
一楓「すごい美人?どれ」
   一楓、漣の手に持ってる写真を覗く。
一楓「うわあ、本当美人。スタイルいいし、誰だろう」
文子「これおばあちゃんよ」
漣「えっ、うそ、うそ、どういうこと、これおばあちゃん」
文子「うん、この水着覚えあるもん。確かにこの水着きてた。綺麗ねえ」
一楓「本当女優さんみたい。やっぱりおじいちゃんやおばあちゃんにも燃えるような青春時代があったんだ。うわあロマンを感じる」
漣「これ俺がやってるインターネットのホームページに載せようかな。『昭和ロマンの部屋』に」
文子「駄目よ。勝手にインターネットに載せちゃあ」
漣「ええ、昭和初期の良さを分かってもらうためだよ」
一楓「ただ単に自慢したいだけでしょ。そんなことおじいちゃん、おばあちゃんが許すわけないでしょ」
   八神朔太郎(65)がゆっくり現れる。
朔太郎「駄目だ」
文子「お父さん、起きてたの?」
朔太郎「そのインターネットとやらに載せるのは駄目だ。そんなのに載せるのなら、写真返してくれ」
文子「お父さん、大丈夫。載せないわよ。ねえ」
   文子、漣の方を見る。
漣「ああ、載せないよ。おじいちゃん」
文子「ねえ。お父さん。写真はもとあった場所に戻しておきます。心配しないで。寝苦しかった?クーラーつけましょうか?」
朔太郎「クーラーは好かん」
文子「さっお父さん」
   文子、朔太郎を部屋に誘導しくるりと振り返る。
文子「漣、だからやめなさいって言ったでしょ。おじいちゃん怒っちゃったじゃない」
漣「分かったよ。写真戻しとくよ」
一楓「もう漣はしょうがないんだから」 
   漣、写真をしまって二階へ上がる。文子またテレビのチャンネルをリモ
   コンで変える。
テレビの声「ニュースです。昭和四十一年に起きたタカミネパン毒物混入事件ですが長い間未解決のまま、あと四日で時効が成立しようとしています。今日はタカミネパン事件に詳しい専門家の柏木さんにスタジオにお越し頂いて下さり……」
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一