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まもなく時効

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36〇神保町の交番
   文子、一楓、漣が交番に入る。東順平(35)が立ち上がる。
東「あっ、おじいさまの」
文子「はい、八神です。父が転倒したそうで」
東「今奥の休憩室で休んでます」
文子「父は無事なんでしょうか?」
東「あまり遠くを歩いていなかったのに久しぶりに歩いたんでしょう。発見しても大丈夫。一人で歩けるって、よたよたしてこりゃ一人で帰せないなって保護してご家族様に来てもらいました」
文子「父はずっと隠居生活を送ってたので。意識はあるんですか?」
東「意識はあるんですが何かひどく疲れているみたいで、久しぶりに歩いたからでしょうかね?あと」
文子「あと?」
東「転倒したから一応ボディチェックをしたんですがちょっと気になりましてね」
一楓「何が気になるんです?」
   漣も警察官をじっと見ている。
東「あざの数と形なんですよ。どうも転倒したあざとは別のあざがあるみたいで」
文子「複数回転倒したってことでしょうか?」
東「いえ、転倒したというより誰かに叩かれたかのような。ちょっと伺いますけど、お宅様でおじい様ドメスティックバイオレンスにあっているとかは」
文子「うちに限ってそんなことはありません」
東「そうですよね。こんなに心配して来てくれてるんですよね」
一楓「私達、おじいちゃんのこと心配してるんです。ここんとこずっと……」
東「心配というのは転倒の心配をですか?」
一楓「いえ、そうではないんですが、つまり、その、とにかく年も年だし……」
東「おじい様はなんで千代田区に?お住まいは横浜ですよね?千代田区に来た理由とか分かりますか?」
漣「千代田区って言ったら……」
文子「さあ、うちの父は千代田区に知り合いはいなかったと思います。外食するならもっと近くでいいはず」
一楓「ここいら辺電気街ですよね?おじいちゃんひょっとしてパソコン買おうとしたんじゃない」
東「それはないと思います。所持金が一万円程度しかありませんでした」
文子「父は奥で休んでるんでしょうか?」
東「今は寝ているみたいで。あっ」
文子「どうしました?」
東「お父様の所持していた財布ですがお父様のものでお間違いないですか?」
文子「はい。父のものです」
東「一応中身も確認してもらえますか?」
文子「はい」
   文子財布の中身を出す。
文子「現金と、銀行のカード。病院の診察券。あと花屋のスタンプカード」
一楓「これ何?」
文子「グラビアカフェの会員カード」
一楓「何それ?」
漣「今流行ってる会えるアイドルの店だよ。千代田区というと秋葉原。ひょっとしておじいちゃんはグラビアカフェに」
一楓「おじいちゃんグラビアカフェなんか行くの?」
文子「うちの父はそういうところは好かないわ。お父さんに限って」
一楓「でもカードはあるよ。行ったってことでしょ?」
文子「それは……私には……」
漣「俺たちにはまだ知らないことがいっぱいあるのかな。おじいちゃんについて」
東「中身もお父様のもので間違いないんですよね」
文子「はい」
東「ではご家族様の身分証明書とか見せてもらえますか?」
文子「はい。分かりました。これでよろしかったでしょうか?」
東「はい。結構です。ありがとうございました」
   東、奥に行き朔太郎を起こす。
東「おじいさん。家族が迎えに来たって。起きれる?はい。はい」
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一