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まもなく時効

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「我々が犯人だと思うがどうしてもアリバイがあって、逮捕できへん男がおるやろ。名前は磯部茂ちゅう」
吉永「はい」
霧島「その磯部が今どこにおるか分かるか?」
吉永「姿を消したんじゃあ」
霧島「ああ、隠れておるようじゃが、ちゃんと足がついてんのや。買い物してる、コンビニのカメラに写ってんねん」
吉永「えっでも磯部の姿を見たものはほとんど……」
霧島「磯部がコンビニで買った買い物、まずりんご、カットフルーツ、ちくわ、サンドウィッチ、おにぎり。なんか共通するもの分かるか」
吉永「りんご、カットフルーツ、ちくわ、サンドウィッチ、おにぎり、果物というわけではない。洋食でもない」
霧島「意外とバナナやカップラーメンは買わへんのや」
吉永「共通するもの……」
霧島「バナナの皮のように食べた後残るものでなくみんな食べたらなくなるものゴミがかさばらないように」
吉永「食べたらなくなる。消えモノみたいですね。ごみをなるべく出さないというのはつまり」
霧島「犯人はなるべく表に出ないよう隠れとるんや。中国人にシェアハウスで貸してる家があるねん。その付近で磯部を目撃している情報がいっぱい入ってる。そのシェアハウスはもともと磯部が購入している家や。その家を磯部は中国人にただで貸しとる。何千万もした家をただでやで」
吉永「そこの中国人が磯部をかくまってる」
霧島「おそらくそうや。もともと磯部名義の家だが今は中国人たちのものになっている」
吉永「やっぱりかくれてるんでしょう。家を手放してまで」
霧島「ああ、将棋で角を捨てるときは何か勝算があるんや。捨ててまでしてもというものが」
吉永「やっぱりその中国人たちシェアハウスに」
霧島「ごみをなるべく出さないちゅうことは自分の存在を消して、おそらく三階の屋根裏部屋にでも忍んでる。家をただで貸すっちゅうことは、中国人に裏切られたくないんや。安泰なんや。角を捨てる価値があるように」
吉永「でもそこに行けば磯部の身柄を確保できるんですよね」
霧島「強行突破してもやつにはアリバイがある。アリバイが崩れん限り」
吉永「アリバイですね」
霧島「アリバイが崩れるとしたら、例の写真。チャリティーのレインボーのシャツを着た磯部の決定的な写真。あの写真が城ヶ島で撮ったものだったのは確認できた。しかし磯部はそのとき東京で仕事をしていた履歴がある。そのときも城ヶ島近くの三浦海岸のスーパーで毒入りお菓子が店に並んだ。あの城ヶ島のレインボーシャツの写真の現物さえ手に入れば」
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一