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まもなく時効

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27〇横浜市中区ドヤ街
   霧島が簡易宿泊所に泊まる土屋紘一(62)と将棋を指している。ギャ
   ラリーがいる。
土屋「刑事さん。それじゃ角がただ損だよ」
霧島「じゃあ、とってみいや」
   吉永がやってくる。
吉永「霧島さん。こんなところでまた将棋、もうまもなく時効なんですよ。タカミネの」
霧島「こいつらがかけ将棋をしてたから、取り締まっとったんや」
吉永「取り締まっとったんやじゃないですよ。なんでそこで将棋指しちゃうんですか」
霧島「ほうら角を捨てて桂馬をもらう。そしてこう。どうや。おたくもあかんやろ」
吉永「勝負あったみたいですね。行きましょ」
霧島「角を捨てるということは、王さんしとめる勝算があるんや。もうかけ将棋せえへんよう、気いつけえや」
吉永「さあ、霧島さん」
   霧島と吉永の近くでサングラスをかけた中島洋平(33)が若い女性、
   野村葵(24)に話かけている。
中島「なあ、事務所に所属してるだけじゃ女優になれないよ。うちにきなよ。このままじゃ君も業界の消えモノになっちゃうよ」
吉永「さっ霧島さん。行きましょう。どこ見てんですか?」
霧島「待ちいや」
   霧島中島と葵に近づく。
霧島「お宅どこの芸能事務所ですか?」
中島「いや、その」
霧島「名刺出してもらえませんか?電話番号のある」
中島「いや、今名刺切らしてまして」
霧島「名刺切らしとる?芸能事務所が。スカウトするときに?」
中島「ああじゃあ君また今度ね」
   中島立ち去る。
霧島「もう来なくていいぞ」
   霧島葵に話しかける。
霧島「あの男になんか誘われた?」
葵「なんかキャリアが全然なくても君の個性があれば女優デビューできるとか。君なら億稼げるとか」
霧島「うまい話に乗ったらあかんで。あれはにせもんや」
葵「そう。やっぱり。何か怪しかったし」
霧島「気いつけえや」
   霧島立ち去り吉永が霧島を追いかける。
吉永「霧島さん。なんで偽物だって分かったんですか?」
霧島「こんなとこでスカウトなんかせえへん。立ち振る舞いも板についてせえへんし、しかもあの男『消えモン』ちゅう言葉を間違って使っておった」
吉永「『消えモン』芸能界から消えていくってことですか?」
霧島「『消えモン』ちゅうのは舞台用語や映像演技用語や。ろうそくとかタバコとか、破ってしまう手紙のこと。舞台や映像で一度使ったら消耗して使えなくなくなってしまうもののことや。そんなことも知らへんようなやつ素人やき」
吉永「なるほど、霧島さん舞台のこととか詳しいんですね」
霧島「友人で教師やりながら舞台やってるやつがおってんねん」
吉永「へえ」
   吉永立ち止まって考える。また霧島を追いかける。
吉永「えっ?教師で舞台?国家公務員ですよね?副業してるんですか?」
霧島「まあ、細かいことは……それよりタカミネのことだが」
吉永「はい」
   霧島と吉永パトカーに乗る。
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一