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まもなく時効

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21〇定食屋「やがみや」(夜)
   紺野亘(54)がドアを開けて入ってくる。怒鳴っている。朔太郎、節
   子店の中にいる。すずが追いかけて入ってる。
紺野「ここか、やがみやってのは?」
すず「やめて紺野さん。みんな私が悪かったの」
紺野「おい、ここの店主」
   紺野怒鳴り口調である。
すず「やめて紺野さん」
   朔太郎厨房から出てくる。
朔太郎「何でしょうか?」
紺野「お前のところのタラの芽だかフキノトウだか、変な草食わされて腹下しそうになった」
すず「お腹なんか下してないでしょ?ねえ紺野さん」
紺野「いや、下しそうだ。なんだ、こんな草みたいなもん食わせて、俺たちゃウサギやヤギじゃねえんだぞ」
朔太郎「迷惑です。帰って下さい」
紺野「俺も十分迷惑被ってんだよ」
   朔太郎、すずの持っている皿のタラの芽とフキノトウをとる。それぞれ  
   食べる。
朔太郎「別に味は特に悪くはないですが。何か?」
紺野「苦えんだよ。苦み走ってんだよ」
朔太郎「これは山菜特有の味です。こういう味なんですよ」
すず「そうよ。紺野さん。こういう味なの」
紺野「謝ってもらおう」
朔太郎「何です?」
紺野「謝れって言ってんだよ」
朔太郎「何に対して謝るんでしょうか?」
紺野「店のもんが客に謝れないのかよ。頭下げろって言ってんだろ」
朔太郎「私の客は井上さんであってあなたではありません」
紺野「同じことだろうが」
朔太郎「お引き取り下さい」
紺野「謝れって言ってんだよ。客に頭下げられないのか?ええ?このアホンダラ」
朔太郎「出てけって言ってんだろうが」
   朔太郎が怒鳴り紺野、すず、節子鎮まる。紺野驚いている。
紺野「ちっ、なんだこのヤクザ堅気の商売が」
   紺野踵を返して店の戸を開ける。紺野が出て行ったあとすずと節子と朔
   太郎が残る。
すず「朔太郎さん。ごめんなさいね。うちのオーナーちょっと堅気とは違うの。気にしないで」
朔太郎「別に全然気にしてないよ。小心者がピーピー騒いでんだろ。店の者だと無抵抗だと思って」
節子「うちの人は客に頭下げたことないから」
すず「朔太郎さんらしいわね。よっ!この生粋の江戸っ子」
節子「うちの人は浅草育ちで。客商売向いてるんだか向いてないんだか」
朔太郎「それよりすずさん。さっき言ってた見せたいものって」
すず「あっ。そうそう。そうだった。いいものがあるの」
   すず鞄からチラシを取り出す。
すず「これこれ」
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一