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まもなく時効

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10〇八神家リビング(夜)
   文子と一楓と漣がいる。
一楓「漣のせいよ」
漣「いや、でも……」
一楓「漣がおばあちゃんの写真ホームページに載せたからこんなことになったのよ」
漣「まさかこんなことになるとは思ってなかったし」
一楓「最低。信じられない。漣ひどすぎる」
漣「……」
   漣うつむいている。
文子「漣、度が過ぎたわね」
漣「でも俺も悪かったと思うけどさ、タカミネ事件の問題はどうするの?やっぱり写真を提供しないと」
文子「でもおじいちゃんが拒んでたし」
漣「だってタカミネ事件だよ。歴史に残るような大事件未解決のままだと」
一楓「おじいちゃん、おばあちゃんの気持ちも考えて」
漣「そんな悠長なこと言ってないで、大事件に絡んでるんだよ。写真を警察に提供すればいいだけじゃん。確かに警察関係者の人たちの間であの写真は見られる。恥ずかしい思いはするかもしれないけど、問題の規模が違うと思うよ」
一楓「でもさあ、そうは言ってもねえ」
文子「おじいちゃん、あんなに怒ったの久しぶりに見た」
   文子、一楓、漣しばらく黙ってる。
一楓「でも私おじいちゃんの気持ち分かるなあ」
文子「うん」
一楓「おじいちゃんの、俺の女は俺のもんだみたいな」
文子「そうね。ちょっとカッコよかったわよね」
一楓「私なんかおじいちゃん見直しちゃった」
文子「やっぱり、昭和初期の育ちだから。亭主関白のとこもあったみたいだけど、おばあちゃんのことはいつも大切にしてたよ」
一楓「漣と血がつながってるとは思えない」
漣「何だよ。それ。確かに悪ノリでやってしまったことはあるけど、そのおかげでタカミネ事件の解決の糸口が見えたんだよ。おじいちゃんだって意地張ってる場合じゃないし」
文子「別に意地張ってるわけじゃないわよ。おばあちゃんを思って」
漣「おばあちゃんだって今しゃべれないけど、もし自分の写真が事件の解決のキーになってるのなら快く提供してくれるかもしれないし」
一楓「そうかなあ」
漣「そうだよ。案外ノリノリだったりして。日本中の皆さーん。私の水着姿見て頂戴。セクシーでしょ?ほうら平成の坊やたち、興奮していいのよってな感じで」
   と漣、半分笑いながら話す。
文子「漣。やめなさい。悪い癖よ。もっと自重して」
漣「分かってるよ。ちょっと言ってみたかっただけだよ。でもさ。このまま時効を迎えるの?」
一楓「そりゃあ、しょうがないわよね」
   漣身を乗り出して、みんなの目を見ながら話す。
漣「本当に本当にいいの?昭和の歴史に残るような大事件だよ。うち八神家が協力すれば犯人のアリバイが崩れて、解決するって刑事さん言ってたよ」
一楓「でもおじいちゃん、ああ言ってんだし」
   八神信之(50)が帰ってきた。
信之「会社に電話がかかってきてびっくりしたよ。ボヤで済んだんだって」
文子「あなたでも窓ガラスが割れてて、今応急処置で間に合わせてるから、ガラス屋さんが来るのは明日」
信之「一体、何があったんだ。なぜ火をつけられた?仕事は手に着かないし。やらなきゃいけないことはたくさんあるし」 
文子「でもみんな無事で」
信之「これからもこういうことがあるってこと?」
   文子、一楓うつむく。
文子「それは……」
漣「ほらやっぱり写真提供したほうがいいんだよ。事件解決してさっぱりしなきゃ」
信之「写真?事件?何の話をしてるんだ?」
文子「あなたにはあとで話すわ」
信之「あとでじゃなく、今聞きたい」
文子「漣、一楓もう寝なさい。窓ガラスは明日来るんだし、補強しててもリビング寒いでしょ」
漣「分かったよ」
一楓「さあ、寝よう」
   文子、節子の部屋から例の写真を持ってくる。
文子「この写真がね」
信之「これ、誰?水着姿じゃん」
文子「おばあちゃんよ」
信之「えっ?おばあちゃん?へえ。で、この写真がどうしたの?」
文子「この写真がね……」
信之「うん」
文子「この写真が……」

11〇節子の水着姿の写真
作品名:まもなく時効 作家名:松橋健一