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交換幇助

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 そう、高杉はいちかを愛していた。これは間違いない。失ったショックは、兄のそれとも比較にならないと思ったのだ。
 だから、いちかを殺した。
 しかし、
「それを今度は松岡が、知っていて、自分の幇助をしてくれるなんて」
 と感じた。
 さらに、高杉がビックリしたのが、警察も、すでに、高杉が怪しいということを分かっているようだ。そうでもなければ、あんな捜査上の話を、ペラペラと喋るわけはない。
 高杉は、自分の死が近いということを感じていた。
「どうせ警察も、自分たちが重ねてきた犯罪まで、明るみに出すことはないだろう。今回の事件だけを単独にするという意味でも、ここで、自分の死が、幇助までしてくれた松岡を救うことになるのだ」
 と思った。
「こんなこともあろうか」
 ということで、密かに手に入れていた
「青酸カリ」
 これは、高杉が幇助した相手のその部屋にあったものだ。
「どうせ、こんな悪党なんだから、何かに使おうと思っていたんだろうな」
 と別に不思議にも思わなかったが、その時、きっと、こうなることを感じて、その場から持ってきたような気がした。
「俺は、これで、いちかのところに行こう」
 そこから先は、走馬灯のように思い出せる過去のことを頭の中に感じながら、最後にうかんだ松岡に対して、手を延ばそうとしている手が震えているのを感じたのだった。

                 (  完  )
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作品名:交換幇助 作家名:森本晃次