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裏表の日本

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 そんな日本という国を、スパイを死に来ている人がいるということで、いろいろと探ってみたが、そんな怪しい人は見つからない。クロイワは探偵を雇って捜索したが、どうにも見つかる気配もない。
 そのうちに、探偵の男が、
「日本という国を、本当に愚かな国だと見ているのであれば、送ってくる人間も、見るからに、愚かな人間と思わせるような人間を送り込んでくるのかも知れない」
 という話もあって、捜査を、
「若者が中心のところに置く」
 という方法を取った。
 今のこの世界は、数十年前のブームが今起こっている。
ディスコ」
 であったり、アングラバーのようなものなど、今ではなかなか存在を確認できないものがあるのだ。
 そもそも。
「アングラバー」
 というのは、言葉としては、隠語っぽいところがある。
「前衛的な」
「非合法である」
 などという曖昧なところがあり、商業的というよりも、オーナーの趣味としての、芸術的なものという意味が大きい。
 昭和の時代に流行ったものであった。音楽でも、
「プログレッシブロック」
 などが流行ったが、そんな感じの雰囲気のものであろう。
 そんな中において、
「本当に、日本を探ろうとする連中がいるのだろうか?」
 ということで探ってみると、そのうちに、怪しい少女がいるのが見受けられた。
 白いワンピースに身を包み、ロン毛でストレートの黒髪。あきらかに、昭和40年代のファッションを思わせる。
 今の平成生まれの青年たちに、
「昭和40年代のファッションを知っているか?」
 と聞いて、知っている人はいないだろう。
「何か、古臭いファッション」
 と思われるだけである。
 しかし、そんなファッションでも、アングラバーのようなところにいけば、
「可愛らしい」
 というイメージになるであろう。
 そんなことを考えていると、一軒のアングラバーに、いつも決まった時間になるとやってくる一人の女の子が、注目を集め始めた。
 女の子の方は、まわりがどんな目で見ているのかということを分かっているのだろうか?
 見るからに、
「彼女は、いつも一人でいるだけで、誰かとつるもうということはない」
 というのだ。
 もっとも、今見ることのないアングラバーなので、
「そんなところに来る人というのは、たいていが、まわりを意識しておらず。自分は自分だ」
 ということで、人を気にしない方が、むしろ目立っていないといっておいい。
 だが、そんな中でも彼女は目立っていた。
 やはり、可愛いという感じだからだろうか?
 しかも、今の女の子のかわいらしさではなく、
「大人の雰囲気を醸し出す中で、決してけがれていないその雰囲気には、汚れなき、そして、純粋さを醸し出しているという美しさ」
 が、滲み出ているのだ。
 そんな彼女を巡って、客は自分たちだけの視線で戦い合っている。
 彼女に決して、見破られないようにと、
「俺だけが目立っているんだ」
 ということを彼女にだけ見せつけようというのだ。
 そんな彼女の雰囲気を、一人気にしている男性がいた。
 それが、探偵として雇われた、
「ホソカワ」
 という男だった。
 ホソカワは、クロイワから、
「どうしても、スパイを見つけることができないので、ひょっとすると、こっちが分からないような地下に潜っているかも知れない」
 という話を聴いた時、すぐに感じたのが、この、
「アングラバー」
 だったのだ。
 最近また流行り出したということを聞いていたし、
「アングラ」
 という言葉が、地下を表す、
「アンダーグラウンド」
 から来ているということから考えても、ありえることではないかということで、この店で張っていたのだった。
 そこで目をつけたのが、彼女だった。
 彼女の名前は、イチカという名前で、決して、賑やかではないが、気になった男性を見つけては、
「密かに、愛し合うようになる」
 ということだったのだ。
 ただ、彼女と一緒に、ホテルに行ったであろう男は、それ以降、誰も見かけることはなかったということだったのだ。
 それを聞くと、
「ホソカワの狙いは、そのイチカという女性だ」
 ということであった。
 イチカも、ホソカワに食指をつけていた。いつものように、何も感じていないような雰囲気で、イチカの視線は、ホソカワを捉えている。他の男性だったら、この時点で、イチカに参っていることだろう。まるで、催眠術にでも罹ったかのようにイチカを見ていたが、ホソカワも、さすがに探偵。
 お互いの気持ちがどこにあるのか、
「相手にとって不足はない」
 というくらいに、
「自分が惑わされないようにしないといけない」
 と、ホソカワは考えていた。
 見ているうちに、イチカは、
「どう見ても日本人にしか見えないのだが、雰囲気や佇まいは、日本のそれではない」
 と感じると、
「かつて、行方不明になって、捜索願を出された誰かということなのかも知れない」
 と思うようになった。
 実際に、そこまで調べることはできないが、
「その女性と話をできないか?」
 ということで、ホソカワはイチカを特殊な手で誘って、話をさせてみた。
 すると、彼女がいうには、
「こんな国、侵略するだけの価値なんかないわ。私が来たのは、それを調べて、最後には、大陸間弾道弾を打ち込んで、これから、今までと違う社会主義国を立国するうえで、アメリカの属国を滅ぼすことにするのよ。でも、他に利用方法はないか? ということで私が来たんだが、それもダメだということなのね、私は聖書にあった、ノアになるのか、それとも、ソドムの街から、人々を救い出す神様になるのかということになるんでしょうけど、結局、そんな助けるに値する人なんか、この日本には誰もいないのよ」
 という。
「これが、この国の運命なのか?」
 と聞くと、
「ええ、そうよ。でもあなたには話したわ。これをどうする? 依頼主に話すの?」
 といって、ニッコリと笑っている。
「僕が探偵であることを知っていたのか?」
 と聞くと、
「あなたは私がこんな姿だから勘違いしているのかも知れないけど、私にとって、この仕事は命がけなのよ。平和ボケの日本人には分からないでしょうけどね」
 というのだった。
「そうか、そこまで日本という国は、海外から、どうしようもない国だと見られているのか」
 と感じると、
「この国は、終わりだな」
 と感じた。
 そして、彼女んの口から聞かされた、
「もう一つの世界の話」
 それは、パラレルワールドではない、二つしかない世界の、
「裏と表」
 だった。
 それは、ホソカワも、依頼主である、クロイワも感じていることだった。
 クロイワもホソカワも、同じ考えで、結局、その思いが正解であれば、
「日本という国など滅びればいいんだ」
 と考えた。
 この考えが、結局、裏表も世界の中での、バイオリズムの線が一致したその時、
「イチカ」
 の願いが叶って、イチカもろとも、日本という国は、この世から消滅するのだった。
 ただ、消滅するのは、どっちかで、果たして、その世界に、残るのは、どちらの日本だというのだろうか?

                 (  完  )
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作品名:裏表の日本 作家名:森本晃次