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サナトリウムの記憶

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「このサナトリウム自体が、その記憶喪失のために。研究所であり、その研究資料としての、元々の記憶の格納所である」
 といってもいいだろう。
 そうなると、
「記憶というのは、本人が潜在しているものを、コピーする形で、どこかに格納できる形にして持ってくることで、その記憶自体を、吸い上げることができる」
 ということは、以前から言われていた。
 しかし、そんな装置をプロジェクトでもない人間に作れるはずはない。
 しかも、このような秘密基地のような場所を民間に作れるわけはない。
 そう、これこそが、
「政府」
 によって作られた、秘密工場であり、
「昭和の人体実験研究所だ」
 といえるのではないだろうか?
 政府の狙いはなにか?
 ひょっとすれば、
「この世ではいうことを聞かない連中ばかりなので、その脳を洗脳した形の裏で国家を造り、いずれあ、コピー世界が、この世界の元の人間に取って代わる」
 という、
「新たな、恐ろしい世界」
 というのが、生まれるのではないか?
 という発想が生まれたのだ。
 この、
「サナトリウム」
 と思しき、この場所は、
「記憶を失うということが、いいのか悪いのか?」
 あるいは、
「失わなければいけない記憶がある」
 ということで、この場所を訪れるということになるのか?」
 などということを考えると、実に不可思議な気がする。
 最初は、
「自殺もやむなし」
 と思っていたはずで、記憶喪失というのが、目の前に感じられた時、
「感覚を麻痺させる何かがあるのでは?」
 と感じた。
 その時思い出したのが、アンモニア臭であった。
 その時一緒に感じたのが、匂いはまったく違うが、恐ろしいという意味での、
「アーモンド臭」
 だった。
「アーモンド臭」
 というのは、いわゆる、
「シアン化化合物」
 による臭いであり、それは、
「青酸カリ」
 を連想させる。
 それ以外で、
「アンモニア」
 となると、ハチに刺された時の中和が感じられ、今から思い出すと、子供の頃、ハチに刺された時、アンモニアを塗ってもらった時、そのきつい臭いから、何かの感覚がマヒした気がした。
 それこそ、
「記憶が失われた瞬間だった」
 と言ってもいいだろう。
 さらに、このサナトリウムには、
「記憶を格納する場所があり、これだけの広さは、そのためなのだ」
 といってもいいだろう。
 失われた記憶が、その人にとっていいことなのか悪いことなのか?
 さらに、この夢を管理する、このサナトリウムの主にとって、これらの記憶を所有、いや、管理することに、何の意味があるというのか。まるで、
「死神」
 という意識が消えないのであった。
 まさかとは思うが、
「記憶を食う」
 などという悪魔でないことを祈るばかりである。

                 (  完  )

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作品名:サナトリウムの記憶 作家名:森本晃次