力の均衡による殺人計画
警察が嫌だと思えば、相手のいうことを聞かなくてはならず、
「一生揺すられる」
という運命を背負うことになり、しかも、自分にとって死んでほしい人間が生き残るということになるのだ。
それを考えると、警察の方がいいのか?
ということになるが、自分に動機もない相手を殺さなければいけなくなった状態を、いかに説明するか?
しかも、こちらも、死んでほしい人は生きていて、自分だけが、
「人のための濡れ衣を背負って、やっていない罪に服さなければならない」
と言えるだろう。
しかも、下手をすれば、
「俺は、死刑になるかも知れない」
というわけだ。
動機もない相手を殺したということは、情状酌量の余地もないわけで、さすがに死刑にはならないだろうが、疑心暗鬼になれば、最悪を考えるものである。
そんな自分が、一体どういう意識を持つというのか、その時にならないと分からないだろうが、そういう意味で、
「交換殺人というのは、恐ろしい」
と考える。
「それを、解消するには?」
と考えた時、思いついたのが、
「三すくみ殺人」
だったのだ。
二人だったら、一つの殺人が起こったことで、力の均衡が破れる。しかし、それを破らにようにするには、最初から最後まで、それぞれが形成し合う関係、つまり、それが三すくみなのだ。
「石、挟み、紙」
というじゃんけん、
「大蛇丸、綱手姫、児雷也」
という、ヘビ、カエル、ナメクジの関係。
それらであれは、均衡が保たれる。そうなると、殺人はもう一つないといけない。そこで三人の関係を探ってみると、一人行方不明の人がいた。そう、この三人というのは、奥さんと、若夫婦の三人だったのだ。
犯人たちのミスは、
「ご主人様が、殺されはしたが、事件の真相について、ある程度分かっていた。だが、自分が殺されるとは思っていなかった。本当は、旦那を殺した相手を、旦那は逆に狙っていて、旦那は旦那で毒を仕込んでいた。それが功を奏したのか、幸恵が数日後、毒を呑んでしまったのだ。それは、旦那が仕掛けたもの。旦那とお互いに殺し合った結果だった。ただ、おかげで、事件の真相に辿り着けた。毒を呑んだ二人は結局、時間差で心中したような気持ちだったのかも知れない」
と言えるのだ。
行方不明になっていた人物が、珠海で発見された。この事件だけは明るみに出てはいけなかった。どういう意味では、死体が発見されたことで、
「三すくみ殺人」
というものが、明るみに出た。
この犯罪は、実に計算されたものだが、交換殺人のように、
「成功すれば、完全犯罪というわけではない。見た目、つまり計画時は、完全犯罪に見えるが、それは、今までになかったことからの錯覚であり、いろいろ問題も多いのだった。
ある意味、
「この事件は、解決までに、時間さえかければ、分かりやすくなってくる」
という特殊性があった。
つまり、
「事件が解決するのは、時間の問題だった」
といってもいいかも知れない。
ただ、この犯罪は、世間に新たな犯罪パターンを生み出したといってもいいだろう。
一種の、
「試験的犯罪」
といってもいいかも知れない。
ただ、まだまだ、生まれたばかり、これ以降、この犯罪が起こるかどうかは、誰にも分からなかったのだ……。
( 完 )
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作品名:力の均衡による殺人計画 作家名:森本晃次