小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

娘と蝶の都市伝説6

INDEX|10ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

「はい、どんなことでも協力します、ついでに私も、400年ということにします」
ポイドンが禿の頭を光らせ、ちゃっかり便乗した。



会議が終わり、部屋に残ったのはムサンのCEOのヒット・ポイドン一人だけだった。
ポイドンは分厚い胸をふくらませ、大きく息を吐いた。
実はポイドンは、ある事実を二人に告げていなかった。
今回発見された変異遺伝子は、B5の用紙で二十ページもあった。

『人間にとってよい方に間違って変異する』という言い方が正しいかどうかは分らないが、これを一斉に発現させたとき、想像もつかない結果をひき起こす可能性があった。
死なない生物ができたり、植物になったり、鉱物になったり、気体になったり、異種の生物と会話ができたり──まさに三万年もの年月を生きる動物など、また永遠の命の出現はどんな問題を地球上にひきおこすのか。

2012年計算で、世界の人口は70億。2023年では80億。人口増加は一日20万人。
カナダ、オーストラリア、ギリシャ、ポルトガルの四つの国の人口と同じ数である。
地球が支えられる量はすぐに越える。

しかも、地球上の生命を支える動植物がすごい勢いで消えようとしている。
欲望を植え付けられた人間は、それをとめることができない。
さすがのポイドンも全身に恐怖が走った。
開いた扉から女性秘書がのぞいた。

ポイドンは手をあげ、待ての合図を送った。
「五分だけ時間をくれ」
ポイドンは、座っていたソファに腰を落としなおした。
「ちょっとだけ、息継ぎをするか。気分直しだ」

ポイドンは重苦し気につぶやいた。
「今日のヤンキースの試合はどうなっているかな」
未来の地上最強の男の趣味は、野球だった。
ニューヨークで育った彼は、純真な野球少年だった。
そして熱烈なヤンキースファンだった。

リモコンのスイッチを押すと、テレビの画面が壁一面に広がった。
縦縞のピンスプライトの選手が大写しになった。
「おお……こいつ」
東洋系のような顔立ちだった。
わーとヤンキーススタジアムの歓声が特別会議室いっぱいにあふれた。
「例の女じゃねえか」

もちろん、新聞やテレビのニュースで知っていた。
小柄な女性投手が大きくふりかぶり、直球を投げた。
「すげえ。本当だ。はえー」
ポイドンはムサンのCEOから、熱狂的な野球のファンに変身していた。

ポイドンは今まさに、目的の変異遺伝子群を体内で活性化させている一人の女性を目撃していたのである、
作品名:娘と蝶の都市伝説6 作家名:いつか京