小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

未来への警鐘

INDEX|2ページ/20ページ|

次のページ前のページ
 

 さらに、もっといえば、その頃の影響か、心なしか、企業努力によってなのか、世間の流れなのか、
「時差出勤」
 というものが、増えてきて。
「一両の電車の乗客が、そこまで多くはない状態となった。
 基本的には、朝の通勤ラッシュを緩和するということが目的だが、当然、勤務時間に変わりがないのだとすれば、終業時間というのも、自ずとずれるというのも当たり前のことである。
 つまりは、通勤時間というのも、後ろにずれる人がいることで、人の流れが分散されることになった。
 そのおかげで、帰りが遅い人も増えたのだが、そういう人は、朝をゆっくり出勤できるが、帰りは、会社を出るのが、8時近くということになり、乗客は分散したとはいえ、結構楽だったりする。
 ただ、かつての伝染病の影響は、社会生活を、根本から変えた。
 その一つが、
「終電の繰り上げ」
 であった。
 鉄道会社は、伝染病が流行った時、まともに影響を受けた。なぜなら、夜の店に時短営業の要請が出ていることで、ほとんどの人が、
「帰りに一杯」
 と思っていた人が、立ち寄らなくなった、いや、立ち寄れなくなってしまったのだ。
 ということは、
「営業していて、電車を遅くまで走らせていればいるほど損だ」
 ということになるのだが、数年経って、店の営業が元に戻ってきても、電車が一度終電を繰り下げても戻そうとしない。
 そうなると、結局、終電がないので、飲み客も立ち寄らなくなった。そういう意味でいけば、鉄道会社というのは、
「呑み屋と、その常連客とを同時に敵に回してしまった」
 ということなる。
 飲み屋は、いかなくなっても別にかまわないが、電車だけは、乗らないと通勤できないなどということで、
「インフラは死活問題だ」
 ということになる。
 そういう意味では、彼ら鉄道会社のやっていることは、
「死活問題である」
 と言えるのではないだろうか?
 そのおかげで、今度は、車が売れるようになった。
「通勤で、ラッシュに遭って、伝染病に罹ることを思えば、車で通勤した方が、道は混んでもまだマシだ」
 ということになる。
 しかも、時差出勤が許されるのであれば、車のラッシュ時間も幅が広がって、車が増えたら増えた分、時間が分散するので、そこまで気にすることもない。
 そうなると、さらに、飲み屋には誰もいかなくなる。中には、
「運転代行」
 にお願いして、飲みに行くという人もいるのだろうが、一時期ほどの飲み会も減って、そんな、運転代行に頼む人も少なくなった。
 ということになると、
「運転代行も、タクシー業界も、相当厳しい」
 ということになるだろう。
 もっとも、本当の蔓延期に比べれば、かなりマシなようで、
「毎日出勤していても、一日に売り上げが数千円ということは、普通にあった」
 というくらいである。
「タクシーを走らせていても、営業すればするほど、赤字だということで、出勤台数を、半分以下にした」
 というくらいだった。
 それでも、客が増えるわけではない。それだけ、客の絶対数が少ないのだ。
 人流抑制のために、政府が発する、
「緊急事態宣言」
 というものが発令されると、
「命令ではない」
 と言いながら、皆が守っている手前、守らないわけにはいかず、しかも、街のほとんどは活動していないのだから、皆、家に引きこもることになる。
 会社も、
「どうしても、出社しなければいけない」
 という人だけ出社するようにして、それ以外の人は、家にいることになる。
 会社によっては、以前からの体制として、家からリモートで、会社のサーバに入り、捜査することができるというような、
「リモートワーク」
 が可能だったりするところもあったりした。
 つまり、リモートワークを行うということは、今回のパンデミックのせいだというわけではないわけで、元々の目的としては、
「出勤数を減らし、都心部に事務所を置くことでの家賃などの支出を減らす」
 ということが目的だったようだ。
 だから、パンデミックが起こる前から、
「テレワーク」
 というものを推進しているところは結構あった。
 実際に、
「都心部にある営業所などの事務所を、3年後には3割にする」
 などという計画を立てている会社もあったようで、実際に、営業所が、都心部から消えていく会社も多かった。
 これは、郊外での、
「大規模工場の閉鎖」
 というものと一緒になって、大企業は、そういう傾向にあったのだ。
 だから、緊急事態宣言を政府が発令し、
「リモートワーク」
 を奨励した時には、ある程度の企業が、リモートワークの態勢が整っていた。
 政府の方とすれば、要請ばかりではいかず、そのための補助金を出すことで、さらなるリモートワークを促したのだ。
 実際に、リモートワークが普及してくると、政府が掲げた、
「人流抑制」
 というものが、うまくいっているといってもいいだろう。
 次第に、猛威が減少してきた伝染病だったが、ウイルス系の伝染病は、
「波を繰り返す」
 と言われた。
 実際に、ある程度の流行が落ち着くまでに、10回以上の波が襲ってきて、その都度、休業要請を行われた飲食店はたまったものではなかっただろう。
 ただ、飲食店には、
「休業すれば、国から補助が出る」
 というものがあった。
 といっても、その額というのは、実に微々たるもので、ほとんどが、
「一日たりとももつというものではなかった。
 さらに、そんな状態において、
「最近の市町村の考えていることがよく分からない」
 と言われていた。
 都心部において、街のあちこちで、工事を行っていたり、ビルの建て替えのために、ビルを壊して更地になったりしているところが散見される。
 それは、
「老朽化による、街の大改修」
 ということであった。
 街が作られていく過程で、同じ頃に、ビルがどんどん建っていき、当時も、建設ラッシュだったということだ。
 政府の、インフラ整備計画もあっただろうし、それ以前には、終戦後の、
「焼け野原からの復興」
 というものもあったのだ。
 当然、ビルが建ったのも、同じ時期になるので。老朽化というのも、同じくらいの時期となる。
 もっとも、最初から、今のように、すべての土地にビルが立ち並んでいたわけではないだろうから、時間差はあったのも当たり前のことだろう。
 戦後から、70年も経つのだから、それだけ老朽化した建物があっても不思議はない。
 実際に、
「今までに、一度も建て直しをしていない」
 という、そんなビルもあったりしたのだ。
 当時としては、最新鋭のビルだったのだろうが、月日の流れは、今から思えば大したことないビルだといってもいいだろう。
 街の近代化というと、地区によって、幾度も行われているようで、
「第五次計画」
 などという数回に渡って行われてきたことが分かっていることも結構あったりする。
 そんな中で、やっと最近、市が、大規模建て替えに本腰を入れてきたようで、
「これを機会に、街の再開発」
 ということも考えられるようになっていた。
 というのも、
「再開発を行うことによって、街の事情が変わってきているので、再開発が必要だ」
 ということなのであった。
作品名:未来への警鐘 作家名:森本晃次