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神のみぞ知る

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 と思っているのだとすれば、それは、確信犯だと言っても過言ではないだろう。
 そのことを考えると、
「俺は、巻き込まれたということでいいのか?」
 と、いまだにあの時のことを考える。
 ただ、いまさら考えても仕方がない。
「今後俺が、あんなややこしいことに関わらなければいいだけで、少しでも、善意の気持ちを見せてしまうと、付け上がられるだけだ」
 と言っても過言ではないだろう。
 そもそも、自分は、精神疾患があるわけではないのだから、相手の気持ちが分かるわけはないし、向こうもこちらの気持ちを分かるはずがない。
「自分が下に見られている」
 と言って、こっちはそんなつもりはないのに、そんな風に感じられると、こっちとしてもたまったものではない。
 あの後からもいろいろあったということを忘れていた。今では、そんな風に思っているので、自分としては、
「その途中経過を忘れてしまっていた」
 ということであろう。
 つまり、思い出したくないような、吐き気を催すようなことが、その間にあったということであろう。そう思うと、本当に今の方が、あの時よりも何倍いいかということであった。
 ただ、今の頼光は、吹っ切れていた。そして、自分という人間が、
「どんなことにも興味津々だった」
 ということを思い出した。
 だが、それがいい悪いの問題ではない。最初に言っていた、
「支えてください」
「助けてください」
 という助けを求めるものは、その要因がなくなれば、その人は、もう用済みなのだということになるのだ。
 この間、この計画に加わるその直前くらい、ある事務所に咲いていたスズランを思い出した。
 仏運ら、
「キレイだな」
 と思うのだろうが、その時の頼光は、
「コンパラトキシン」
 を思い出した。
 スズランなどに含まれる毒であり、活けている水を飲んでも、中毒を引き起こし、死に至ることがあるという。そんなものを意識してしまうのだから、その時の自分が、そこからずっと、何かに吸い寄せられているように感じた。
 精神疾患のオンナと関わってからの自分を、映し出しているようだった。

                 大団円

 頼光も結局自分から抜け出せず、結界の中に自ら入っていたようだ。これは、意識してのことで、
「こっちの方が楽なのでは?」
 と感じたからであった。
 では、真田はどうだろう? 彼は、
「神仏櫓」
 に向かったのだ。
 彼は自分でも意識していたが、躁鬱症だった。躁鬱の鬱状態になりかかった時、今を迎えたのだ。
 他の三人が、うまく抜けられたかどうかわからない。だから、自分も抜けられるかどうか分からないと思っていた。
 彼は、他の三人など、どうでもいいと思っていた。かといって、
「自分さえよければ」
 とも感じていない。
 神仏櫓にも結界が張ってあった。
 その色は、
「真っ白」
 だったのだ。
 真っ白なために、他のところが、真っ黒で、
「見えるはずのものが見えない」
 という状況になっている。
 ただ、逆に、
「今まで見えていなかったものが、見えてもくる」
 ということであった。
 実際に見えてきたものは、城址があった。いつの時代のお城なのかは分からないが、お城の中に、食料もいろいろと揃っているようだ。
 中には、先ほど結界に落ち込んだ3人もいた。
 その3人が、真田を待っている。
「どうして、皆ここに?」
 と聴くと、
「さっきあった結界を超えると、ここに来たんですよ」
 というではないか。
「結界というものを皆感じたのかな?」
 と真田は思うのだった。
 それを察してか、3人とも、それぞれに、結界のことを話し始めた。
「あの結界は、俺たちがそこを通る時に、この城を見せてくれるための、パスポートのようなものなのかも知れないですね」
 と口々に言っていて、その内容は、こういうことに落ち着くのだろうと思うのだった。
 ただ、皆それぞれに、毒というものも意識したようで、頼光が、コンパラトキシンであり、もう一人は、
「ハチの毒」
 だった。
 ただ、これは、毒によって人が死ぬわけではなく、毒によってできた身体の中の抗体と反応して、ショックを起こすという、
「アナフィラキシーショック」
 というものが影響しているということである。
 これは、精神疾患の人間が、
「まわりに伝染する」
 という発想からくるものだったといってもいいだろう。
 精神疾患の病状が、実は他の3人にも移っているということを、誰が気づいているだろう。
 結局、こういう強盗のような犯罪を犯したわけであるが、それなりに事情もあり、その事情を、
「見えない力」
 が判定し、その合否を判断したということになるのだろう。
 この神崎村というところは、そういう魔力のあるところで、この村を選んだということがそもそも、
「選んだ時点で救われていた」
 と言っても過言ではないだろう。
 ただ、彼らがここで助かって、
「さらにこのあと、どのような運命をたどるか?」
 ということは、誰に分かるということではない。
「ここまではよかった」
 ということであるが、
「最後に笑うのは誰なのか?」
 というと、本当に、
「神のみぞ知る」
 ということになるのだろう。

                 (  完  )
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作品名:神のみぞ知る 作家名:森本晃次