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二重人格の正体

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 何しろ、自分は、彼女のためにやっているわけではあるが、それは自己満足のためであって、彼女のためになるかならないかなど、考える必要もないからだ。
 要するに、好きだと言った自分の気持ちを踏みにじったわけだから、どうなろうと知ったことではない。ただ、彼女のためにできるだけのことをしようと思っただけで、
「彼女のためになること」
 というのをしようと思ったのではない。
 それだけ、見せかけの優しさを与えるだけだ。そう、それは、彼氏としてでもなく、恋人としてでもない。友達としてというだけだと思っていたのだが、何か、気持ちの上で落ち着かないものがあった。
 それがどこから来るのか分からなかったが、それがどこからくるものなのか、すぐに分かった気がした。
 というのも、
「彼女に対しての嫉妬心があるからだ」
 といってもいいのではないか?
 彼女を、友達だとしてしか思っていないはずなのに、彼女が他の男と親密に話しているところなど見ると、無性に腹が立ち、何もできない自分に腹が立つのであった。
 それこそ、彼女に対しての、
「嫉妬」
 というものではないだろうか。
 嫉妬があると、他の人との交流も上の空になり、自分がどれほど中途半端なことをしているのかということを思い知るのだった。
 白石氏が、なぜ今頃、嫉妬という意識を思い出したのか?
 ということを考えていた。
 実際に嫉妬というものを考えていると、最近現れた紫少年に、何やら、月光の印象を思い浮べるのだった。
「なぜに、月光の印象なんだ?」
 という思いであるが、
 中学生のちょうど思春期の時期に知り合った時、最初から、月光の印象が、紫少年にはあったのだ。
 それが、
「嫉妬だったのだ」
 ということを、ずっと忘れていた。中学生のその時に、嫉妬だということに気付いていたのかどうかも怪しいところである。
 自分が誰か好きになった人がいて、その人に対して、確か、彼も同じように好きになったのが同じ子だったのだ。
「もし、ライバルが他の人だったら、そんな意識になることはなかったはずだ」
 と思うのだが、ライバルが紫少年だということが分かると余計に腹が立つ。
「いや待てよ。それでは年齢がまったく合わないではないか?」
 と思う。
 紫青年とは、十数歳も年齢が違う。
 ということはどういうことなのだ?
 紫青年は、あの時の少年ではないということになるのだろう。
 だが、当時の同じ感覚しか、彼のことは感じない。
 そう思っていると、ふとしたことに気が付いた。
 紫青年は、記憶を失っているという。
「自分にも躁鬱の気はあるが二重人格性はない」
 と思っているのだが、どこか、ぽっかりと開いた穴がある気がするのだった。
 それを感じると、
「紫青年が、自分のもう一つの人格ではないか?」
 と思うのだった。
 そして、その記憶の中にある同じ人を好きになったという感覚は、ひょっとすると、記憶の中にあるものだけではなく、
「さらにこれから起こることの前兆ではないか?」
 という不可思議な感覚があるのだった。
 ドッペルゲンガーというものが、
「見れば近い将来に自分が死んでしまう」
 と言われている。
 それはきっと、最高に感覚が敏感になっていて、
「予知能力を示したのではないか?」
 という思いであった。
 つまり、自分と、紫青年の将来について、
「予知能力が働いた」
 ということになるのではないか?
 と感じるのだった。
 そう思うと、紫青年が、
「もう一人の自分」
 だということを感じると、彼が自分の中にいる、
「ハイド氏だ」
 と感じたのだ。
 その思いによって、月光というものの発想が、完全に、
「月に向かって吠える、オオカミ男のように見えるのだ」
 それが、
「変身」
 という発想で、次第に夢の中で、薬がなくとも、月光によって、自分がハイド氏に変化していることが分かった。
 そして、その元が、紫青年なのだ。
 しかし、紫青年はどうしたというのだ?
「それは、中学生の頃にいたという、自分の中の埋まっていない部分の、欠落した記憶を、辻褄合わせで埋めようとした、デジャブ現象ではないか?」
 と思えてくるのだった。
 ドッペルゲンガーにデジャブ現象、それらのものが、記憶喪失から、躁鬱症。さらには、二重人格性を形づくる、
「ジキルとハイド」
 のお話に繋がってくるのではないだろうか?
 その正体が、人間の中で一番醜いといってもいい、
「嫉妬」
 というものではないだろうか?
 醜いものであると同時い、人間として、一番人間らしいと言われる、
「もう一つの人格」
 を、一緒に併せ持っていることになるのであろう。

                 (  完  )
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作品名:二重人格の正体 作家名:森本晃次