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悪い菌

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 と思わせて、何とか講和に持ち込んだり、相手が諦めて退却するというような状態に持っていく必要がある。
 そういう意味では、籠城戦というのは、実に危険を伴う、
「諸刃の剣」
 のような作戦だといえるだろう。
 今の桃子は、自分では、
「そんな籠城戦をしているような気がする」
 と思っていた。
 彼の気持ちを引き付けるだけ引き付けておいて、少しずつ殲滅していく。
 しかし、自分が籠城戦をしているということを相手に悟らせないようにしなければいけないということまで自分ではわかっているつもりであった。
 そんな状態で、気持ちを強く持っていなければいけないはずの桃子だったが、そうもうまくいくものではない。
 そんなことを考えていると、
「最初はたいしたことのない。ただの風邪なのではないだろうか?」
 と感じていたのだが、だんだんと不安になってきた。
 このご時世、
「世界的なパンデミック」
 だったり、
「季節性のインフルエンザ」
 というものであったりと、不安は絶えない。
 しかも、そのどちらも、
「人と接触してはいけない」
 という縛りがあることから、検査を受けることが必須になってくる。
 病院に連絡を入れ、PCR検査というものを受けることにした。
 検査自体はたいしたものではなく、時間にしても、数十分で結果が出るもので、実際に診察してもらうと、
「陰性です」
 という結果に、ホッと胸をなでおろすということになったのだ。
 そういう意味で、病院に行って検査を受けたのはよかったのだが、今度は、別の意味で不安が募ってきた。
 それが、精神的なものだった。
 実際に陰性判定が出て、安心したはずなのに、急にまた不安が募ってきたのは、この間の夢見があまりにも、普段と違っていたということを感じたからだった。
 一つ、感じたことがあった。
「気持ちがいいと感じるのは、寝る時であり、一番嫌な瞬間というのは、目が覚める時ではないか?」
 という思いだった。
 現実逃避をしたくなることで、
「寝る時が何もかも忘れられる」
 という思いと、
「起きる時が、現実世界に引き戻される時だ」
 と感じる思いだということである。
 だが、今回は、起きる時がそんなにつらいと感じなかった。
「なぜなのだろう?」
 と考えてみたのだが、それがなぜなのかと思った時、
「夢の中で夢を見ている」
 という感覚がよみがえってきたのだった。
 それは何がいいたいのかというと、
「今回の体調の悪さによる夢は、リアルであり、実際のことに時系列を通りても近いことで、本当のことではないか?」
 と感じたかのように思うのだ。
 そんなことを考えていると、
「いつも体調が悪い時、同じようなことを考えていたように思っていたが、実際には、今回が初めての経験で、しかも、夢から覚めてくるように思えるにも関わらず、実際には覚めるどころか、まるでマトリョシカ人形のように、開けても開けても、中からは少し小さな人形が出てくるだけだった」
 という感覚になってしまうのだ。
 これも、
「負のスパイラル」
 というものであり、
「悪いものの連鎖が続くことで、断続的に目が覚めていて、しかし、実際は目が覚めているように思っているのは、本当は覚めなければいけない夢を、覚め切らないことが問題であり、このまま、まさか目が覚めないなどということになるのではないだろうか?」
 という思いが募っているのも、感じてくるのだ。
 つまり、今回のことは、自分が意識して、していることではなく、
「外部から侵入した菌によって、もたらされていること」
 ということを考えていると、頭の中にもたげてきたのが、
「自殺菌」
 というものであった。
「まさか、このまま自殺をしてしまうのでは?」
 と思ったが、それも一瞬だった。
「自殺菌を意識している以上、それ以上、悪い菌が、自分の身体に侵入してくることはないんだ」
 ということを感じるからではないだろうか?

                 (  完  )
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作品名:悪い菌 作家名:森本晃次