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つかさの頭の中

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「最近の私は、いろいろ頭の中で、妄想がいろいろ花開いているような気がするわ」
 と思うようになっていることに気づいた。
 すべての意識が、どこか中途半端なところで終わっているように思うのは、まるで、
「夢を見ていて、最後まで見たという記憶が残っていない」
 というそんな時を思わせるのだった。
 吊り橋だって、
「路傍の石」
 だって、
「ドッペルゲンガー」
 だって……。
 ほんの一部であるが、自分の中の夢を経由して辿り着く感覚が、すべて、いいところまで発想が赴いているにも関わらず、中途半端に終わっているのだ。
 つかさは最近、
「私が自殺をするなら、電車に飛び込みそうな気がするな」
 と考えていた。
 何と言っても、電車に飛び込むというのは、これほど理不尽な死というものはないということを自覚していた。
 要するに、
「電車を止めた」
 ということになり、本人が本懐を遂げ、死ぬことができたとしても、その賠償は家族に行く。
 本来なら一番恩恵を受けなければいけないはずの乗客にはなんら還元はなく、その賠償金は、鉄道会社に行くのだ。
 これほどの理不尽はないだろう。
 それを考えると、つかさは、
「鉄道にだけは、飛び込みたくない」
 と思っていた。
 しかし、それでも、鉄道自殺は減らない。それが何を意味するのかということを考えると、
「死にたいと思っている人を、自殺菌が、鉄道に引き寄せるからではないか?」
 ということであった。
「まさか、自殺菌は、鉄道会社の回し者?」
 とも考えられるのだった。
 確かに、鉄道会社ほど、極悪なものはなく、賠償金を残された家族に請求して、涼しい顔をしている。法律に守られているので、正当なものなのだ。
「まるで、やくざ顔負け」
 といってもいいだろう。
 となると、自殺菌を、
「必要悪だ」
 と言ったのは、前言撤回ということになる。
「自殺菌ほど、弱肉強食の典型例はないだろう」
 となると、自殺菌というものの正体は、昔からいわれている、
「死神」
 のようなものなのではないだろうか?
 そんなことを考えていると、
「鉄道会社の正体」
 が、まるで、
「魑魅魍魎の類」
 なのではないだろうか?
 働いている連中がどこまで自分たちが悪に染まっているのか分かっていないだろうが、法律に守られているということで、
「いかに世の中から守られているか?」
 ということを分かっているのだろうか?
 その報いはいずれやってくるだろう。
「自殺菌というのも、いつまでも一所にとどまっているわけでもないだろう」
 と考えると、
「何かの妖怪に似ていないだろうか?」
 と考えるようになった。
「そうだ。座敷わらしではないか?」
 とつかさは感じた。
「座敷わらしというのは、子供のような妖怪のことで、その妖怪が住み着いているところは、家が反映し、座敷わらしがいなくなったとたん、家が没落していく」
 というものであった。
 だから、
「座敷わらしというのは、怖い妖怪ではなく、神のごとく、敬って大切にしないといけないものだ」
 ということであった。
 だが、実際には、
「座敷わらしの存在はあくまでも迷信だ」
 というのが、強いのではないだろうか?
 座敷わらしのような、
「善良な妖怪」
 が、信じられていないのだから、死神のような、鉄道会社に救う、
「自殺菌」
 は、黒伝説とでもいうような形で、信じている人もいるだろうが、その発想すら思いつく人はほとんどいないことだろう。
 それを考えると、つかさは、自分が不登校になっていた理由が分かった気がしたのだ。
 別に勉強が嫌いでもない。
 学校が嫌いでもない。
 苛めを受けているわけでもない。
 それらのことを考えると、つかさにとって、
「電車を使って学校に行かなければいけないのが怖い」
 ということであった。
 つかさには、電車のホームで、後ろから背中を押そうと、虎視眈々と狙っている、何かの姿が見えた。
 それが、
「自殺菌というものの仮の姿ではないのだろうか?」
 と思えてならなかったのだが、もし、學校に行けるとすれば、ある程度まで、ギリギリの精神状態にならないと無理なのかも知れない。それこそが、
「パーキンソンの法則」
 といってもいいのかも知れない……。

                 (  完  )
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作品名:つかさの頭の中 作家名:森本晃次