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悪党選手権

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「プレイ以外だと、結構寂しがりやなところがあるんじゃないかと思っていましたね。ただ、私が感じたことですけど、結構正直だったような気がする。こちらから何も聞いていないのに、自分のことを結構話してくれてね。そこは、あの人が正直な性格だから、そんな感覚なのかって思いましたね」
 というではないか。
「じゃあ、いろいろなことを話してくれたのかな?」
 と聞くと、
「ええ、そうね、プライベートなことも結構話してくれた気がするわ。ここだけの話だけどってね。でも、それは、よくある話のような感じで話してくれるんだけど、いかにも自分のことなのよね、それをこっちが分かっているのを知ってか知らずか、話始めると、結構すべて話をしてしまうタイプの人なんだって思うわ:
 というではないか。
「君たちは分かっているのに、彼がごまかそうとするという感じかな?」
 と聞かれて、
「ええ、そういうのもあるけど、お互いに分かっていて、プレイの延長で楽しんでいるということもあったわ。でも、逆にいえば、どこまでが本当なのか分からなくなるという感じになっちゃうのよね」
 というではないか。
「というと?」
「店長さんは、どこか、わざとらしいところがあったから、何かを隠したいと思っている時、わざと、明かすことがあったりしたのよ。つまり、気を隠すには森の中っていうでしょう? あれに似た感じなのかしらね。私も、冗談で、突っ込んだっりするんだけど、いつも照れ笑いのようなことをしていたわ。だから照れ笑いをする時は、案外と本当のことがあるって思っていたの。だから、ある意味、あの人ほど分かりやすい人もいないと思っていたのよ」
 というではないか。
 そんな話を聴くと、
「こういう店の女の子たちは、さすが、相手を見る目がしっかりしている」
 と刑事は感じた。
 それはそうだろう。
 まったく知らない相手である男性と、密室の中で、嫌らしいプレイをするのだから、当然というものであろう。
「その店長さんとのお相手の中で、何か気になることってありました?」
 と聞かれた彼女は、
「そうですね。どうも彼は、何かに悩んでいるというところがありましたね。いろいろ来てみると、どうも変な女に引っかかっていて、今のままでは、うまくいかないというようなことを言っていたようなですよ」
 という。
「変な女」
 と聞き直した。
「ええ、どうも、自分を脅迫してくるような女がいるので、困っているといっていたんですよ」
 というので、
「どんな女なんですか?」
 と訊ねると、
「ハッキリとは分からないですけど、話の雰囲気では、主婦の人で、本当は離れたいんだけど、どうもそうもいかないということだったんです。脅迫というのは、私が勝手に思い込んだだけなんですけど、話の文脈から考えると、どうもそれ以外には考えられないような気がしたんです」
 と、彼女は言った。
「ということは、あなたは、彼のその言葉を信じているということですね?」
 と聞くと、
「ええ、信じないと当然、理屈の根本は違ってきますからね」
 というのだった。
 それを聴いていると、店長の風俗嬢に対しての話には、
「かなりの信憑性がある」
 ということになるとのだろう。

                 大団円

 信憑性というのは、あくでも、その人が信じたということを、まわりが見て、
「妥当だ」
 ということを感じさせないと、成立しないものではないだろうか?
 しかし、職場のパートさんは、
「不倫相手が、万引き犯だ」
 ということで、それをつなぐには、脅迫という考えしか成り立たないだろう。
 つまり、
「ここから、店長が脅迫をしている」
 という、三段論法的な考えから、生まれた信憑性であった。
 しかし、今回の風俗嬢の話からいけば、
「本人から聞いた」
 というではないか、
 確かに風俗嬢相手に、
「どこまで信憑性を考えればいいのか?」
 ということになるのだろうが、
「本当にそれでいいのか?」
 と普通なら疑うのだが、こうやって面と向かって話を聴くと、彼女の話にもその表情にも疑うべきところはまったくなく、
「彼女がウソや冗談を言っているようには、とても思えない」
 と感じるのだ。
 そう思えば、風俗嬢の証言の方が、よほど信憑性があるように感じられる。
 だからといって、
「前者の証言をまったくデマだと決めつけることはできない。何と言っても、脅迫という言葉の共通点があるのだから、そこに何かのあざとさが含まれているとしても、まったくのでたらめだということは絶対にありえない」
 と言えるだろう。
「だけど、まさか、店長さんが殺されるなんてこと、思いもしないわ。ここにいる間は、本当に楽しそうなんですけどね」
 と彼女は言った。
「でも、人はいつ何時、何があるか分からないからね」
 と、店長が言った。
「それはそうなんだけど、あの人は私が見ていて、人から恨まれることはなかったと思うの。ひょっとすると、脅迫されていたということだったので、その相手と何かトラブルでもあったのかしらね」
 というので、
「君は、その言葉を信じていたのかい?」
 と坂崎刑事が聴くと、
「ええ、信じていたわ。彼の中で、その言葉を疑うところはまったくなかったのよ」
 というではないか。
「この子たちの勘は結構鋭いと思うのよ。だって、彼女たちは、それなりに、身体を張って仕事をしているわけだから、よほど信頼していないと、かなりきついと思うの」
 と店長は言った。
「ええ、私もそういう意味では、人を見る目はそれなりに持ってると思うの、少なくとも私の目から見て、店長さんは悪い人ではなかったわね。もちろん、それなりにリスクはあると思っているけど、店長さんは、とにかく優しかったわ」
 という。
「優しかった?」
 と聞くと。
「ええ、SMプレイなんかでは、相手を信頼していないと危ないのよね、一歩間違うと、首を絞めてしまって、絞殺ということになりかねない。そういう意味で、相手を信頼していないと成り立たないプレイなのよ」
 というではないか。
 万引き犯のことについて、もう一つおかしなことを言っていたのを、迫田刑事は聞きつけた。
 元々聞きつけたのは、田村刑事だったが、迫田刑事が、そこで疑問に気が付いて、その問題を掘り下げることになったのだ。
 田村刑事が話を仕入れたのは、事件から数日が経って、もう一度、迫田刑事から、別件で、新しい店長から預かっていた書類を、
「返してきてくれ」
 と言われ、訪れた時だった。
 その時、以前は、浅川主任に話を聴いたのだが、今回はその日ちょうど休みだったパートのおばさんがいて、その人から、
「刑事さん、ちょっと気になったことがあるんですけどね」
 というのだった。
 話を聴いてみると、浅川主任と同じように、
「羽黒店長が不倫をしている」
 という話と、
「万引きをした女性との間で不倫をしているようだ」
 ということをいうのだ。
 だが、今回の話は、以前に聴いた浅川主任の話ほど、漠然とした曖昧なものではなく、むしろ、ハッキリとした内容だったのだ。
 顔の雰囲気や背格好や、その特徴も教えてくれ、
「今見れば誰か特定できますか?」
作品名:悪党選手権 作家名:森本晃次