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血の臭いの女

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 しかも、時間帯が、一番警察のパトロールも手薄になるということも分かっていて、さらに、場所の選定も、間違いないのだから、警察でもどうしようもないことであり、パトロールを強化するといっても、限界があるということであろう。
 それを思うと、借ではあるが、
「民間が動いてくれる」
 ということを、
「抑止として使う」
 ということにしないと、自ずと警察にも限界があると思い込んでいるのだった。
 本当であれば、
「何かあったら、どうするんだ?」
 ということが最優先なんだろうが、警察としても、マスゴミから、
「最近の治安の悪さは、そもそもの警察のやり方に問題がある」
 といって、警察組織を、斬ってくるという報道の仕方をしてくることで、世間の噂などから、警察のメンツや威信が、崩れることになってしまうのだった。
 そこで、彼ら、
「私設警備隊の登場」
 ということになる。
 さすがに警察から、お願いというものできないので、警察の予算の中から、彼ら警備隊に、一部を運営費として渡し、
「裏で繋がる」
 ということになったのだ。
 自治体からの、
「運営費」
 とはくらべものにならないくらいの金額が提示されたのだ。
 元々、自治体の安さには腹が立っていたが、それ以上に、ムカつくのは、その金額が自分たちという存在を軽視して、舐めているということが分かったからだ。
 ただ、今回の金額の違いには、
「メンツと威信」
 というものが、入っているだけに、それなりの金額になっているのは当たり前のことであったが、それだけではなく、警察というものが、
「俺たちを認めてくれた」
 ということが分かったことで、少なくとも、
「警察という国家権力に勝った」
 ということも言えるのだった。
 しかも、今回は、警察から一人、警備隊が出動する時に同行することになった。
 それにより、
「警察がもっている権力や、能力を、俺たちが使うことができるんだ」
 ということで、何よりも、そのことがありがたかった。
 つまりは、彼らの行動を妨げるようなことをすれば、警察官がひとりでもいることで、
「公務執行妨害」
 ということが適用され、
「協力しない市民がいれば、協力させるだけの権力を持ち合わせている」
 ということなのだった。
 元々、これがないのが、
「俺たちにとっての、一番のアキレス腱だ」
 と思っていたので、警察に乗っかるのも、
「願ったり叶ったり」
 ということになるのだった。
 そんな状態で、見回りをしているところで、死体を発見してしまったのだった。
 ちょうど、新聞配達がまだウロウロしている。夜も明ける前のことだったのだ。
 そんな中において、死体が発見された。その死体は、まだ若く、青年といってもいい。発見した、
「私設警備隊」
 の一人は、
「マンションの玄関から、脚が見えたんですよ」
 ということであった。
 被害者の身元は、すぐに分かった。その男は、近くの大学生で、このマンションの住民かと思えば違ったのであった。
 財布の中から免許証と大学の手帳が見つかり、大学で確認してもらうと、
「法学部の、梶原佐吉」
 だということであった。
 梶原佐吉は、ほとんど所持品はなかったようで、カバンも落ちているわけではなかった。最初は、
「犯人が、持っていったのだろう」
 ということであったが、目的が分からない。
 身分を隠すつもりであれば、ポケットも空にするはずなのに、別にポケットを物色したわけではない。
 ということは、このまま放置されたといってもいいだろう。
 大学の2年生の二十歳だということだった。
 一つ気になったのは、マンションのオートロックの中にいたので、誰かの部屋に行っていたということだろうか?
 彼の所持品の中に、スマホがあった。当然、通話履歴や、LINEなどの送受信の履歴も調べられたが、ほとんどは、友達との会話であったが、一件、意味不明の連絡先があった。
 相手の名前は、
「ミホ」
 と書かれていた。
 そう、察しのいい読者であれば、この美穂というのが、田辺美穂であり、通話というのが、昨日美穂が取ることになった。あの気持ち悪い電話だったのだ。
 男がどんな会話をしていたのか、その履歴が残っているわけではないと思い調べてみると、何とも気持ちの悪い声が入っていた。
 刑事はそれを聴いて、
「なんだ、これは?」
 ということになった。
 刑事も聞いた瞬間に、この気持ち悪い、まるで自慰行為のような声を、まともに聞くことはできなかった。
 仕事として聞くと割り切っている刑事でさえもそうなのだから、実際にいきなり聞かされた美穂は、溜まったものではないだろう。
 しかも、スマホの画像も調べられたが、明らかに、どこかの女の子を盗撮していたのだ。
 時系列にして、昔から、普通に表を歩いていうところが目立っていたのに、次第に、盗撮っぽくなってきて、どうやら彼女の部屋も分かっているのか、部屋を出てから、マンションを出るまでの様子が完全に映し出されていたのだった。
 しかもである、そのうち次第に、
「どうやって撮ったんだ?」
 という、部屋の中を思わせる写真も出てきて、部屋の中に一人しかいないはずの写真まで出てきたのだ。
 そして、その後になると、彼女が、男と歩いているところや、レジの近くでニコニコ笑っているところまで映っている。
 どうやら会社の帰りをつけて、何を買っているかということまでチェックしているようだ。
「うわあ、何てやつだ」
 と、最近では、そんなストーカーも珍しくはない時代だが、どうやって撮ったのかということが分からないような写真を持っているのが、あまりにも常識を逸脱しているのが常軌を逸しているかのようで、口にするのもおこがましい男であったのだ。
「最近は、こういうやつも増えてきているというが、ここまでひどいのはなかなか聞かないよな」
 と、まるで、梶原本人には絶対に撮れないだろうという写真を、いとも簡単に撮影し、それを持っていることに恐怖を感じる。
 担当刑事は、こんな男の存在が、果たして、
「殺されたことで、犯人を憎めるような人間なのだろうか?」
 と考えさせるのだった。

                 大団円

 被害者である梶原という男が掛けた電話の相手が誰かということは、すぐに判明した。
録音された内容には、被害者である梶原の声しか残っていなかった。
 いや、ここで、被害者というのは、あくまでも、
「殺人事件の被害者」
 という意味で、ストーカー事件としては、
「加害者」
 なのであろうから、言葉の使い方も、難しいというものである。
 警察はさっそく、美穂のところを訪れた。
 美穂は、家の近くで殺人事件があったということすら知らなかったので、警察の訪問に、ビックリするというよりも、キョトンしたと言った方が正解かも知れない。
「田辺美穂さんで間違いないですか?」
 と聞かれた美穂は、なぜ警察が自分のところに来たのか分からないので、不安ではあったが、
「はい。そうです」
 と、正直に答えるしかなかった。
 本当は、
「どうしたんですか?」
 と聞きたかったが、とりあえず、そう答えるしかなかった。
作品名:血の臭いの女 作家名:森本晃次