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同一異常性癖の思考

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 とにかく、海外にいて、自分が何もできないと思わせていれば、
「犯人捜しをまた始めるとしても、今度は国内に目を向けるだろう」
 というのも、片桐の計算だった。
 そんな片桐に対して、
「何とでもして、自分が助かりたい」
 と思っているやつだと感じた萩原は、警察官になったことで、それまでとは違う感覚になっていることに、片桐は気づいていなかったのだ。
 何しろ海外にいることでもあるし、会ってもいない相手の心変わりなど分かるわけはない。あくまでも、
「目の前に見えている」
 ということだけが、真実だということなのであろう。
 萩原の方も、次第に片桐から気持ちが離れていて、自己嫌悪に陥っている自分が、精神的なジレンマに襲われているということが分かっていたのだ。
「片桐をこのままのさばらせていてもいいのだろうか?」
 という思いと、
「俺も捕まりたくはない」
 という思いが交錯している。
 それでも、かつての、極悪人といってもいいほどの異常性癖を持っていた自分が、一気に正義感に近づいていることで、逆に、片桐という男を、
「絶対に許せない」
 と感じてきたのだ。
 そこで、
「墓場まで持っていこう」
 と思っていた妹の白骨死体を、一度どこかに隠し、そして、すぐに発見されるようなところに再度隠したのだった。
 だから、
「学校の廃校跡から見つかった」
 というのも、ごく自然であり、その自然を招いたのが、萩原刑事だったのだ。
 萩原刑事は、今までの罪を暴露し始めた。
 萩原刑事の証言によって、今までいまいち最後のピースが嵌らなかったところがピタリと嵌ったのだ。
 ここまでくると、片桐にも、逮捕状を出すくらいは十分であるが、彼には、前述のように、他にもいっぱい余罪があるようだった。
 これも、萩原が話してくれたおかげで、すべてが明るみに出るようで、ここまでの極悪人であれば、
「国際手配」
 ということができるのだ。
 ただ、片桐も、
「萩原と連絡が取れなくなった」
 ということで、少し不安に感じるだろうから、他に動いてしまうのではないか?
 ということが言われるようになっていたが、実際には、動いていないようだった。
「きっとやつも、萩原が口を割るとは、夢にも思っていなかっただろう」
 ということで、
「時間との闘いだ」
 と思っていたが、いとも簡単に、片桐の身柄を拘束できるようになった。
 やつの悔やみはやはり、萩原に対してであり、ただ、その悔しいというターニングポイントは、
「お宮入り寸前で、ガセネタの作戦を行ったことが、一番の間違いだった」
 と言っているようだ。
 なるほど、あれがなければ、桜井刑事も今度の事件の真相にはたどり着けなかったかも知れない。
 そのことを、片桐は、
「オオカミ少年だ」
 と言ってるということであったが、迫田刑事は、最初は分からなかったが、途中から分かるようになっていた。
 すぐに、そのことに気づかなかった迫田刑事は、
「やはり自分が、桜井刑事に追いつくまでにはまだまだ時間がかかるんだろうな?」
 ということであった。
 しかし、勧善懲悪な性格が、今回の事件の解決に一役買ったというのは、当たり前のことだろう。
 それを思うと、迫田刑事も、
「俺もまんざらでもないか」
 と思うようになっていったのだが、
「萩原刑事はいくら異常性癖といっても、憎むことはできないんだよな」
 と感じるのだった。
「俺だって、一歩間違えれば」
 と考えてしまいかけた迫田刑事だったが、
「いやいやそんなことは」
 といって、心の中で首を振っている自分を感じていたのだ。
 策を弄する人間は、自分がされることに気づかない」
 というがまさにその通りだろう。
 片桐の敗因は、
「自分と同じ性癖だと、皆自分と同じ考えをずっと貫いていける」
 と考えたことだったのではないだろうか?

                 (  完  )
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作品名:同一異常性癖の思考 作家名:森本晃次