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損得の犯罪

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 もちろん、尾行がつけられたりしたが、最初の犯行の、ちょうど一か月後くらいであろうか? なんと、交通事故によって、急死してしまったのだ。
「悪質なひき逃げ」
 であり、かなりの猛スピードでの突進だったようで、
「完全な即死だった」
 ということであった。
「事件の、重要容疑者だったのに」
 ということで、警察は、完全に、
「迷宮入り」
 を考えているようだった。
 だが、事件というのは、面白いもので、彼が殺害されたことで、またいろいろ分かってきた。
 坂上が、二つの犯行を犯したのは間違いない。第一の犯罪のパスケースも、完全に、自分が犯人ではないということを警察に信じ込ませるための演出だったようだ。
 指紋を自分で、もう一度つけるような怪しい行動が、今回は偶然を装っているとでも思うと、
「いやいや、そんな小説のようなことはないだろう」
 と思わせる、一種のトラップに近い発想を持たせようということだったのだろう。 
 一つ一つのトリックはちゃちいのだろうが、一番の大きなトリックは、やはり、
「交換殺人」
 ということだったのだ。
 この事件の本当の主犯は、山形で、やつが、交換殺人というものの企画を考え、シナリオまで書いたのだが、その登場人物である坂上が、想像以上に狂暴だったことが、命折りだった。
 山形も、家庭崩壊の中で、元々あった悪党の血統のようなもので、この犯罪を考えたのだが、その白羽の矢を立てた人間の凶暴さを計画に入れていないようだった。
 ただ、山形も死んだといってもただで起きる男ではなかった。
 今回の交換殺人がうまくいかなかったり、自分が死ぬようなことがあれば、そお伏線を用意していた。それが、今回の、
「ひき逃げ」
 だったのだ。
 そのうちに犯人は捕まるだろうが、この男も、一種の、
「交換殺人」
 というものの、エキストラの一人だった。
 つまり、
「坂上はどっちに転んでも死ぬ運命にあった」
 ということだったのだ。
 それも、ひき逃げ犯が捕まったことで、すべてが明るみに出たのだ。
 これも山形が最初に練っていた計画通りだった。
 結果誰も、得をした人間がいるわけではない。
 そのことを考えると。桜井刑事は、頭の中で考えるのであった。
「交換殺人なるもの。結果として、誰一人幸せになることもなく、復讐とはいえ、結果、すべてが不幸になるということになるんだろうな」
 ということを考え、そして、
「山形も今、あの世で同じことを考えているんだろうな?」
 と感じたのだった。

                 (  完  )
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作品名:損得の犯罪 作家名:森本晃次