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自殺後の世界

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 その世界では、
「耽美主義」
 のようなものが広がっていて、美を最優先にすることで、それ以外が、あくまでも自由、そして平等なパラダイスが育まれる世界。
 そこが、この世界でいうところの極楽浄土なのだろう。
 その世界は、転生を行っている今の循環世界ではない別の世界。
「パラレルワールド」
 なのか、それとも、
「マルチバース」
 と呼ばれるものになるのか。
 それを考えると、
「ひょっとすると、あのベッドの上にあった、ナイフのように見えるあの物体は、兄が私をいざなおうとしているのかも知れない」
 と思った。
「自殺というものが、悪だと言われるようなこの世の中、どこまでが、現世界であり、どこからが死後の世界ということになるのか、実際に誰も見たものはいない」
 というのか、
「生まれ変わって、前世の意識はすべて消えているのだから、当たり前だ。でも、どうして覚えていてはいけないのだろうか?」
 とも考える。
 本当に生まれ変わるというのであれば、記憶は消えていたとしても、人間に生まれ変わりという意識がないのは、何かがおかしい気がしていた。
「きっと、人間は生まれた時が、一番であり、どんどんと減点されていって、死を迎えるその時というのは、赤点に達した時ではないか?」
 と考えるのは、無理なことなのだろうか?
「いやいや、このような発想自体が、現代の世界を肯定しようとしているものであり、それが、見えない力によっていざなわれているのではないか?」
 と思うことで、自殺をいうものを、徹底的に否定して、
「何者からか与えられた自分の意識だと思っているこの世界」
 において、果たして何をさせようというのか。
 今すぐに自分が死ぬということはないと思うのだが、
「ナイフを見た」
 ということが、将来の自分を決定づけることになるのではないだろうか?
 みゆきは、
「明日から夢を見ても、その内容を忘れないのではないだろうか?」
 ということを、感じたような気がした。
 そして、いずれ、
「私は自分が死ぬ夢を見て、気付いたら、そのまま死んでいたということになるのだろうな」
 と感じ、開けてくるパラレルワールドに思いを馳せるのであった。

                 (  完  )
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作品名:自殺後の世界 作家名:森本晃次