(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ
3話 1万円札3枚
あれは2週間ほど前のことだったかな、浩二から「明日行きたい所があるんだが、スマン、付き合ってくれないか?」とTelが架かってきたんだよ。
あいつは学生時代は未確認生物発見同好会のリーダーで、いまもバイトしながら活動を続けてるだろ、それで「今度はどんな未確認生物を追っ掛けてるんだよ」と訊いてやったよ。
するとね、声を弾ませて「まことにまことに、世紀の大発見になるかもな」と言って、あとはウフフと笑ってやがるの。
「おいおいおい、もったい振るなよ、ちゃんと話してくれないと付き合ってやらないぞ」と文句を付けてやると、「じゃあ、明日いつもの居酒屋で」と。
俺はなぜかいつも以上に興味がわき、翌日会ってやったよ。で、浩二のヤツ、まったく奇妙なことを語ったんだよなあ。
その内容とはね、――。
今年は初詣に行けなかった、だけどね、ちょっと遅くなったけど、まあどこでも良いかと、町外れにあるだろ、メッチャ寂れた白鳥(しらとり)神社っていうのが、そこに先週お参りに行ったんだよな。
すでに時季外れ、境内は閑散としてて、人っ子一人いなかったよ。それでもな、100円玉を賽銭箱に投げ入れて、神殿に向かってお決まりの二礼二拍手一礼。もちろん願い事はね、毎年恒例の『極上の未確認生物に遭遇しますように』とな。
これで一安心と振り返ると、神殿の横、10mほど先に立ってたんだよ、レディー3人が……、というか遭遇のお願いと間髪入れずにね、出会ったこともない奇妙な生物3体がね。
真ん中をAとすると、そのA嬢の身長は180センチくらいあったかな、白いコートを羽織り、真っ白なロングヘアーをなびかせていてやがんの。それに、『えっ、女優さん?』と思うほどのスタイルだぜ。
ただな、普通とちょっと違うのは、人間ではまことに希なグリーンアイズだったんだよ、その上に、そう、こっからだよ、耳かっぽじってよく聞けよ、直樹。
5秒ぐらいの間隔で目が光るんだぜ。それだけじゃないぞ、耳のてっぺんもチカチカ、チカチカとね。ただ鼻先と顎はマスクしてはったから確認できなかったけどな。
次はだな、向かって右側女性、そのBさんは身長160センチくらいかな、黒コートを着た普通俺たちが見掛けるオフィスレディー。
だけどもそれが驚き桃の木山椒の木、ブリキに狸に蓄音機、ぶんぷく茶釜は化け狸……だったんだよ。
というのも急に俺に近付いて来て、「ここで何をしてらっしゃるの?」と。
だけどもな、その移動中になんとパッ、パッと消えはったんだよ。そんな現象に奥歯の虫歯が確認出来るほど口を開けて、アレレ・レと目を丸くしてると、さらにビックリポンだよ。
B姉さんが仰ったんだゼ。「地球の兄(あに)じゃさま、ソーリー、ソーリー、ヒゲソーリー、驚くことなかれ、これは我が日常の単なる《時空移動》でありんすよ」と。
作品名:(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ 作家名:鮎風 遊