(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ
『覚悟しときなさいよ』って???
私はこの最後の言葉にマジ背筋がゾゾ・ゾーとなりました。
しかしながら、ここからはコリコリ、キシャキシャ、ムニュムニュなどなど。普段聞き慣れない内臓類の咀嚼(そしゃく)音を響かせながら他愛もない世間話しに花を咲かせました。
それはそれは楽しい一時でした。それでついつい発してしまったのです。「娑羅さん、これから時々デートしようか」ってね。
これに野生のプリンセスは冷え切ったアイスウォーターをごくごくと飲まれ、私の提案を無視し、バックからスマホを取り出されました。そして眼光鋭く申されたのです。
「直樹君、今日の本題に入るわ、これ観て。なぜ貴方と浩二がここにいるの?」と。
私の目の前に突き付けられたスマホをのぞき込むと、確かに浩二と私が怖々そうに山中を歩いてる動画じゃありませんか。そして私は思い出すのにそう時間は掛かりませんでした。
そして聞き返しました、「ああ、俺たちだけど、なんで映ってるの?」と。
すると娑羅さんはキリッと背筋を伸ばされて、淡々と述べられたのです。
「これはね、村の猪之助が黄金山から持ち帰ってきた見張りカメラの映像よ、知ってるの、黄金山よ、あそこはね、山奥の、そのまた山奥にあるとっても神聖な空間なの、源平合戦に敗北してから800年以上も我が魔界平(まかいひら)一族が汚れた人間を絶対に立ち入らせないように守ってきた山なのよ、さあ……、なんで?」
こんな娑羅姫の迫力に、私は間が持たず、思わず網の隅っこに転がっていたホルモン一片をグニュッと箸で摘まみ口に放り込みました。
そして、こんな私のリアクションに娑羅さんはプッツンと切れられたのです。
「最低! 目ん玉ひんむいてよく見なさいよ、なによ、この汚いジャンバーにダボダボのズボン、登山靴じゃなくて、すり切れたズック靴、あ~あ、もう嫌だ嫌だ、……、なぜ貴方たちがここに映ってんのよ、ホワイ? きっちり説明してもらわないと、――、もう絶交だわ!」
もう森のプリンセスどころではなく、女赤鬼の形相でした。
これは我が人生の中で最低で最悪場面、超ヤバッ!
私はそう自覚し、「洗いざらいお話しします」と頭を下げました。そして生温かくなったビールをゴクゴクと飲み干し、あの奇妙な出来事を語り始めたのです。
作品名:(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ 作家名:鮎風 遊