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(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ

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2話 鬼の形相


「ねえ、直樹君て貧乏の割に元気そうね、……、なんで?」
 高級焼き肉店・てっちゃんのテーブルで向き合って再会の乾杯を終えると、娑羅姫はいきなりこんな質問を投げ付けて来られました。
 なんで、って?
 私は口に含んだ生ビールを飲み込まず、しばし沈思黙考。されど5秒の時の流れの後、我が喉チンコは生泡に充分刺激されたのか、思わずブツ、ブーと吹き出してしまったのです。
 それが焼かれた網にかかり、はかなくもジュッ、ジューっと。
 その音が切なくも消え行く時に、店員さんが訊いてきました。「ご注文は?」と。
 そして姫のファーストオーダーは、「そうね、まずは網の交換をお願いします」と。
 もちろん店員さんはキョトン。その理解不能の状態の下で、精一杯に「あのう、網はまだ汚れてませんが……」と主張されました。
 されども娑羅姫は一歩も引かず、「いえいえ、このうつけ者がここへお漏らししちゃったのよ、バッチーでしょ、よろチくね」と。
 この迫力に負けたのか、いや違う、きっとすべてを理解したのでしょう、バイトのお嬢さんはクス、クスッと笑い、高らかに「了解で~す!」と。そして落ち着いた口調で、「ご注文も」と。
 私はこんなやり取りに、どちらもスッゲーなあとただただポカーン。
 こんな私の黙(だんま)りを破るかのように、娑羅姫が注文を発せられました。
「そうね、タン、ミノ、ハツを2人前、それとてっちゃんが4人前ね、お願いします」
 これを聞いた私、ちょっと遠慮がちに「それらって、内蔵ばっかりだろ、いいのかい?」と尋ねました。するとお姫様は高らかに発せられたのです。
「その通りよ、舌と胃袋と心臓、プラスホルモン、通称てっちゃんで大好物の腸よ、私はロースとかハラミとかの肉はいらないわ」
 こんな宣言に私は「へえー、そうなんだ、……、だけどお姫さまがなんで?」と訊いてしまいました。
 これに娑羅姫は可愛くニッコリと。そして、「私は平家の落人の子孫、山奥育ちよ、村人やマタギたちが捕ってきた熊、鹿、猪、狸などの野生動物をずっと食してきたわ、そんな中で、やっぱり内臓が一番美味しかったの、だからよ」と。
「そうなんだ、娑羅さんて野生のプリンセスなんだ」
 私はこんなほとんど意味不明の合いの手しか返せませんでした。
 されどこれに「その通りよ、少なくとも可愛い森のフェアリーじゃないわ、覚悟しときなさいよ」と述べられまして――。