(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ
6話 面々と命を
今いる所は直径約1kmの球体の核シェルターの中、その歴史は今から5千年ほど前に白鳥座星人が他の宇宙基地から1ユニットを運んできて、この黄金山の地下に設置した。
要は彼らの地球基地なんだよ。
その構造はね、下の半球が4層構造、そして上半分が第5層目となっている。一番下の第1層では下水処理や汚物等の処理、次の2層目は上水製造、核融合発電、蓄電、そして外部からの太陽光の畜光などが行われてるんだ。
君たちは地球内近距離カプセルでここに来たのだろ。その降車した所が第3層。そこはね、様々なカプセルの発着場なんだよ。
カプセルの中でも一番大きな機体、それはね、時空弾丸移動のためのスワン号ってんだ。
その移動の理屈はね、例えばだ、100mのロープを巻けば、その両端の距離は10cm位になるだろう。人間の常識では距離は物理的な長さだが、宇宙のコモンセンスとしてはだな、距離は巻き取りも折り曲げることも出来るんだよ。
この理屈でね、白鳥座星人は宇宙を実に短時間で自由に移動してる、すごい連中だよ。そして他に、付随設備として物流冷凍倉庫や食料/飲料工場などがあるんだよ。
第4層はこの基地の頭脳部分。白鳥座星人が支配する統括コントロールステーションがあるよ。
他にこの基地内で働くAIロボットたちの休息や保全ファシリティーもあるし、もちろん星人や人間の病院、またその子供たちが通う学校もあるんだよ。
そして第5層はね、つまり地上階で、この球体基地の上半分。そこの中心にお城がそびえ、周りには牧場や森。あちこちで泉が湧き、数本の小川がサラサラと流れてるんだ。
人工太陽がドームの天井に昇れば昼。それが沈めばもちろん夜で、プラネタリュームにより満天の星空が見られるんだよ。雨は乱数的間隔で降り、もちろん雪も舞うぜ。
まさにここは理想郷、そうシャングリラと断言できるかな。
だけどね、一つだけ足りないものがある。それはね、地球のありのままの自然、つまり生き物たちだよ。
されども幸運にもね、この基地が隠されてる上方の外側は黄金山。そこには命ある動植物たちが溢れているんだよな。ウィルスの関係から決して基地内に連れて来たり持ち込むことは出来ないけど、ここの白鳥座星人たちは面々と彼らの命を繋いで来てるんだよ。
白鳥座星人は黄金山の自然を心より愛し、守って行くことも一つの大きな使命と思ってるんだ。
そのためにはサポートが必要。そこで白鳥座星人をAとすると、他種B・C・Dの知能生物と共に黄金山基地を共同運用することにしたのだよ。
作品名:(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ 作家名:鮎風 遊