(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ
ちょっと表現がロマンティックじゃないよね、言い換えれば、ノイシュヴァンシュタイン城より数倍高いようなお城だね。
そしてそれを包む風景はまことに牧歌的、緩やかな上下がある大地、いや野草が広がる牧場、そして遠くには小さな森があり、その近くには赤いとんがり帽子の集落が三っつ四っつ。ここは中世のヨーロッパかと勘違いするほどだったよ。
だけどね、もっと驚きが。ここは明らかに牧場だよ。
当然放牧されてる牛や馬や羊はたくさんいてたんだけどね、ちょっと動きが違うんだよな、そうだなあ、――、カタカタ、カタカタとね。
これって、ひょっとしてロボット。
そう思い至った時にブーンて目の前に蜜蜂が飛んで来たんだよ。それで反射的にパッと捕まえてやると、……、まさにビツクリ!!
そやつもなんとA1ロボちゃん。一体ここはどうなってんだと頭を抱えてる内に、無事到着致しましたよ、山烏ジッチャン宅に。
ちょっと小洒落た丸太小屋、その玄関にジッチャンとバッチャンが待っててくれたのか、「浩ちゃんに直ちゃん、よう来やしゃんした」とまるで孫のように迎えてくれはってね。俺たち二人、思わずニッコリ、ホッコリ、マッタリ、……、ですわ。
「孫あり遠方より来たる、また楽しからずや、ヒャッホー!」
こんな派手な掛け声の後、大きなダルマストーブがあるリビングに招いてもらってね、その後「これで旅の疲れ、飛んで行け」と温かいミルクを頂いたんだよ。
それはほんのりと甘く実に美味しかったぜ。けどね、浩二が首を傾げてボソボソと言うんだよな、「これって、さっき見たAIロボットの牛のミルク……、だよな」と。
この独り言を耳にした山烏・ジッチャンが「そうだよ、美味(うま)いっしょ」と答え、その後「なるほどなあ、君たちはここがどこか知らないんだ、じゃ、今からオリエンテーションを執り行うことにするべ」と告げ、この異次元世界がなんぞかの紹介をしてくれはったんだよな。
その内容とはね、――。
作品名:(前編) 黄金山基地の未確認生物たち:あんたには俺がいるだろ 作家名:鮎風 遊