(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
しかし、姫様は静かに佇(たたづ)まれ、約1分間の沈思黙考。そしておもむろに仰ったのです。
「私がこのお城の女王になるためには、一つ条件があります」と。
これを耳にしたKASIKO星人の代表は即座に「それは何でしょうか? 何でもお聞き入れ致します」と顔を前へ突き出しました。
すると姫様はホッホッと笑われて、静かに述べられたのです。
「それはご飯のお供、いえいえ、言い直します、……、これかる始まるであろう私の女王人生には、お供が必要です、その適任、『just the man fot it』はここにいる直樹です」と。
私は何のことかさっぱりわからず、ポカーン。
すると浩二がツカツカと私の所まで歩み寄ってきて、「おい、直樹、お前もちろん娑羅さんの人生のお供をするだろ」と。
これで私はやっと全貌が見えて参りました。
いつぞや娑羅姫は「直樹に覚悟はあるの?」と言ってましたが、あの頃すでに彼女はこうなって行くことを予測していたのかも知れませんね。
されども考えてみれば、この宇宙人の基地内にあるお城、そこに住む女王の人生のお供になるということは、そう、人間界の社会生活、つまり会社勤めに、へべれけもご愛嬌の飲み会、そして拳突き上げるスポーツ観戦……、などなどもろもろを止めるってことですよね。
ちょっと辛いかもな、と。
しかし、大、大、大好きな娑羅さまからのお誘い、たとえ人間止めて宇宙人になろうが、ここは新たな人生に踏み出すべきだ。こう一念発起致しました。
そして後は very quick でした。
「魔界平(まかいひら)娑羅姫からのお誘い、人生のお供、ここに宇宙男児、謹んでお受け致します」
こうはっきりと答えると、ブラボー、ブラボーと声が掛かり、その後は拍手喝采。
これはちょっと私を持ち上げすぎかなと思いまして、手の平をみな様の方に向けて、「まあまあまあ」と大声で抑えに掛かりました。
するとこれを指名されたと勘違いしたかどうかは私には不明ですが、マーマー姉さんが素早く壇上へと駆け上がってきて、娑羅姫に言ったのです。
「ヒミコちゃん、おめでとう」と。
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊