(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
「この地球上の《まほろば》、そう、大和(やまと)の地で起こった最大の悲劇、それは源平合戦であります、敗れた平氏一族はこの黄金山に落ちて来られました、振り返ればあれから800年以上の年月が流れました、されどもこの黄金山近くの奇っ怪山(きっかいやま)で、一族は絶やすことなく血を繋ぎ、ここの大自然を、そして古代よりの生き物たちを守って来られたのです、その中心の魔界平家(まかいひらけ)の姫、娑羅さまがやっとこの基地に御訪問頂きました、この黄金山はまさに宇宙の宝です、時空を超えた星人を代表して深く御礼申し上げます」
なかなか立派な挨拶で、聴衆からの大きな拍手が。
それで気を良くしたのか、星人代表のオッちゃんが絶叫しよったのです。
「ホントのホンマ……、感謝感激雨雪崩(なだれ)!!」
あ~あ、それはそれで良かったのですが、私も思わず叫んでしまいました。
「今度は雪崩か~い!」と
すると今度は私たちの前に紺のスーツに数珠を握りしめた、滅茶苦茶濃厚化粧の女性が現れ、「ご愁傷様です、ただ今よりお城に移動して頂き、酒池肉林とはいきませんが大宴会を、あー、かっぽれかっぽれと執り行いますので、ご案内させて頂きます」と。
このバケモノの出現により娑羅姫は三歩後退りをされ、私の手をギュッと握りしめてこられたのです。私は姫の不安を取り除くため耳元で囁きました。
「こいつがこの間お話しした擬態ベタなHYOKORI生物です、TPOをわきまえないだけで、特に害はありませんから」と。
これに娑羅さんは安心されたのか、ホホホと笑われ、「それではよろしくお願いします」と頭を下げられました。
すると今度はHYOKORI生物が私に向かって言ったのです。
「おい、そっちの……、《ご飯のお供》!……、仕方ないからお前さんも来なされ」と。
これを聞いて私はプッツン。
だって、お姫さまのお供だったら良いのですが、思わず叫んでしまいました。
「俺がご飯のお供だって? ということは、俺はキムチか明太子だと、何言っとるか!」と。
しかし、HYOKORI生物は逃げ足が実に速い。時空移動技を使ってサッと消えた行きました。
そんな腹立つ事もあったのですが、その後はAIロボット、通称・《愛ロボちゃん》のエスコートで、太陽の優しい光りに包まれ、かつ心地良いそよ風に吹かれながら牧場を突っ切り、ドーム中心にそびえたつ黄金山城に到着したのです。
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊