(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
もちろん私には返す言葉なんてありませんし、まっすぐ小屋へと。そして娑羅さまから手渡された1万円札3枚を現金支払機に投入し、まずは娑羅姫を檻の向こうへと。
それから私の分の3万円を鉄格子の隙間から頂き、同様に支払って中へと。
そこからは浩二の時と同じようにカートに乗ってスロープを下り地下プラットホームへと。
しかし前回には気付かなかったのですが、行き先看板がありました。
右方面はもちろん黄金山基地、そして左方向は『瀬戸内海・海底基地』とありました。
私はこれを見て、「ひょっとするとKASIKO星人達は、850年ほど前の平家の不幸を見たのかも知れないなあ」とぼんやり妄想してますと、娑羅姫が一言仰ったのです。
「平家滅亡の海ね」と。
それから私の腕をギュッと掴み、「カプセルが来たわよ、さっ、行きましょ」と前へと力強く一歩踏み出されました。そして私たちは躊躇なく白いカプセルに乗り込みました。
後は静かにかつ順調に、あっという間に黄金山基地に到着。
されども大・大・大・ビックリでした。それは私たち二人が基地の停車ホームに降り立った時のことです。
なんと30頭ほどの高等地球外生物たちが幟(のぼり)旗を立てて私たちを……、いや、言い直します、姫さまだけをお迎えしてたのです。
なぜなら旗には大きな字で書かれてあったのです、『ようこそ! 魔界平(まかいひら)娑羅姫、大歓迎!!』とだけ。
私の名ががない、……、そらそうですよね、考えてみれば、前回浩二と二人で基地に侵入し、私だけが、逃げ帰ったのですから。
そしてあれよあれよと言う間に、その集団の代表であろう1匹、身体の尖った部位をピカピカ光らせながらですから、きっと白鳥座の中で最も明るいデネブ、その惑星のKASIKO星人の一頭が前へと進み出て来ました。
そして事もあろうか、その深い緑目から涙をポロポロと零しながらのウェルカム・スピーチが始まったのです。
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊