(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
まったくの場違いの男女二人、なんでこんな山奥に??
なにか恋愛が実らず心中でもしに来たのかと首を傾げてると、マーマー姉さんが実に馴れ馴れしく声を掛けるんだよ。
「ねえ、ヨレちゃんにツンちゃん、ちょっと止めてよ、なんぼ擬態が出来るHYOKORI生物であっても、こんな山奥でそんな場違いな格好への変身はないしょ、大事なのはT・P・Oよ」って。
これにヨレヨレ野郎が「いつもマーマー姉御は、俺たちの擬態はまあまあで良いと言ってくれてるものだから……、あきまへんか、ごめんクサイ!」とペコリと頭を下げるんだよな。
その言い草がコメディアンぽくって、浩二も俺もオモロ涙が零れぬように空を見上げてケラケラと。
それから視線を戻すといつの間にかHYOKORI連中は大きなオス猿とメス猿に変身して、マーマー姉さんをドヤ顔でじっと見つめてるんだよな。
さすがにこれにはマーマー姉さんも吹き出してしまい、「ヨレちゃんにツンちゃんたら、いいわよ、HYOKORI生物の才能を充分認めて上げるわ」と近寄り、猿2匹に強いハグをなさったよ。
そして大きく深呼吸をして、「こっちは地球人の浩二に直樹、基地で暮らすかも知れないので、その時はよろしくね」と俺たちを紹介してくれたんだよな。
それからマーマー姉さんと大猿2匹と一緒に黄金山をしばらくウロウロさせてもらってね。
よろしいですか、娑羅姫さまの疑問、――『なぜ俺たちが普通の格好して黄金山にいたのか?』――
多分その時にだと思います、魔界平(まかいひら)一族の方がセットした隠しカメラに写り込んだのは。
そうではないかと高い確率で推察致しますが……。
されども娑羅姫は「じゃあ、なぜそのお姉さんと大猿2匹は映ってないの?」と。
そらそうですよね、その疑問は当然です。
だけど私は長々と語った奇妙な実体験物語のぶり返しはもう堪忍してよと思い、「そこは人間の5000年先を行くKASIKO星人達の基地だよ、まったくの勘だけど、多分そこの住人たちはカメラに映らない薄膜を被ってたのとチャウかな、いえ、私はそう推察致します」と所見を述べました。
そしてもう黄金山基地の体験談はこの辺で終わりにしたいと思い、「ねえ、それより石焼きビビンバでも食べない?」と話題を振りました。
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊