(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた
だけれども不思議だったんですよね、娑羅姫はこれらすべてに反応せず、じっとうつむいておられるだけ。
そして幾ばくかの時が流れ、運ばれて来た石焼きビビンバをゆっくりとかき混ぜながら仰ったのです。
「直樹、今度の日曜日、あなたどちみち暇でしょ、私をその基地に連れて行きなさい」と。
こんないきなりの要望を聞いて、「娑羅さんが興味を持たれたのはわかりますが、ただちょっとね……」と口籠もりました。
だって入場料が1人3万円もいるのですよ。今晩のお支払いをして、もうスッカラピン。
なぜか突然に、某社のCMのキャッチフレーズが浮かんで来ました。
『そこに愛はあるのか! いや、そこに金はあるのか!』ってね。
そんなドギマギしている私に娑羅姫は「ビビンバ、ビビンバ」と口ずさまれて、ニッコリ。
それから一言、「お金は私が出すから」と。
この救いの言葉に私はホッ!
そしてすかさず「お姫様を今度の日曜日にお連れ致します」と約束致しました。
だけど私の右脳にちょっと違和感が。
「ビビンバ、ビビンバって、遠い昭和時代に流行ったドドンパ、ドドンパじゃねぇの」と。
すると娑羅さまは真顔で答えてくれはりました、「あのね、宇宙の時の流れは永遠よ、それに比べ、昭和って、2、3分前のことよ、直樹、……、真摯に心得よ!」と。
私は何を心得たら良いのかさっぱり解りませんでしたが、大好きな娑羅さんです。
私は「まことに姫の仰る通りです、この直樹、謹んで黄金山基地へとご案内させて頂きます」と笑顔で頭を下げさせて頂きました。
作品名:(中編) 黄金山基地の未確認生物たち:やっと先が見えてきた 作家名:鮎風 遊