(後編) 黄金山基地の未確認生物たち:私の一番は魔界平娑羅
2話 いて座A*(エースター)
さてさて星シャブリをどこのブラックホールに追い込み、奈落の底へと落とそうか?
いや、その前にヤツは今どこに?
KASIKO星人からの情報では射手座のα星:ルクトバ(射手の膝)辺りをゆっくりと遊泳しているとか。
私たちはこの情報を得て、検討を重ね、決断しました。
天の川銀河の中心にある射手座、そこにブラックホール:「いて座A*(エースター)」が存在します。
その穴は直径約2,000万km。
太陽の大きさが140万kmですから太陽より約15倍大きいホールです。
まあ宇宙レベルではさほど大きいものではありませんが、質量は太陽の約400万倍、まさに吸引力は超大です。
山椒は小粒でもピリリと辛い、宇宙空間ではそんな表現が当てはまる黒穴です。
位置は地球から約2万7,000光年先。太陽までの距離が0.0000158光年ですから、地球から太陽までの距離を17億回繰り返した先にあるということです。
もちろん今の地球人の技術では到達できない遠さ。
しかし5000年先を行く白鳥座KASIKO星人の時空弾丸カプセル、その出発点Aから到着点Bまでの距離をロープのように巻き取り、その厚み分のAB間の距離を使わせてもらえば、約1ヶ月でその近辺に到達できます。
そして星シャブリをブラックホール・A*(エースター)に落とす方法は射手座だけに矢で射止めるのではなく、どちらかと言えば追い込み漁です。
ヤツが一番嫌う砂金を袋状にまき、その中へと包み込み、カプセルから噴出させた宇宙風で砂金をさらに吹き付け、ブラックホールへと誘導して行く。
そしてその巨大な引力により奈落の底へと落とすという方法です。
この計画を実行し、1年が経過しました。
途中星シャブリは暴れたりしたのですが、顔面に思い切り砂金を吹き付けたりして、……、最終的にウォォーンと泣き叫びながら大きな黒い穴へと落ちて行きました。
もう這い上がって来ることはないでしょう。
作品名:(後編) 黄金山基地の未確認生物たち:私の一番は魔界平娑羅 作家名:鮎風 遊