怪しい色彩
「考えられることとして、潤子の共犯者ではなかったか?」
ということであった。
弟は、
「両刀だ」
というではないか。
つまり、潤子は、兄を隠れ蓑にして、裏で暗躍し、弟を本当の実行犯に仕立て上げたのかも知れない。
なぜ、ゲイ仲間である旦那を弟が殺そうという思いに至ったのか、細かいところは分からない。
「潤子にでも聴いてくれ」
ということであるが、
「そもそも、変質的な恋愛なのだから、精神的にも、
「自分が病んでいる」
という思いであったり、
「後ろめたさから、少しでもきつく言われると、相手に逆らえない」
という部分があるのだろう。
この部分を、潤子が巧みに利用したのではないだろうか?
当然、この計画を考えたのは、潤子で、共犯は、弟だった。
しかし、今ここで、この計画を、いきなり知ることができたというのは、
「偶然が重なっている」
とはいえ、不思議な感覚だ。
「俺は、この事件に、何かの形でかかわっているんだろうか?」
と、南部は考えていた。
すると、家の表の呼び鈴を押す人がいた。
出てみると、そこに数人の刑事が立っていて、
「逮捕状だ。松前陸人殺害について、ゆっくりと話を聴かせてもらいたい」
というではないか。
南部には、今だ逮捕もされずにほくそえんでいる潤子の顔が思い浮かんでは消えていくのであった……。
( 完 )
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