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平均的な優先順位

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 橋爪はそこまで思い出してくると、先ほどの革靴の音は自分の靴の音で、今回ここで、記憶が戻るというのは、最初から決められていたことだったのだろうか? そこには、何かの「優先順位」が含まれているような気がして、仕方がなかったのだ。
 ただ、自分がサイボーグということは、このまま、永遠に死ぬことがないということか、それが一番恐ろしかった。
 別の人間の身体をいただいてのサイボーグであれば、身体が衰えていき、どちらかというと、精神がいつまで生きられるかということだ。
 それを考えると、自分が人間ではなく、輪廻転生できないものだと考えると、これでいいのか悪いのか、恐ろしくてしょうがないのだった。
 そして、記憶と、理屈を頭の中に取り戻した橋爪は、その時、
「一刻も早く、俺をこんなにした親父を見付けないと」
 と思っていたが、親父がどこにいるか、こちらから探すこともなく、分かったのだった。
 翌日会社に行くと、
「橋爪さんですよね? 橋爪省吾さん」
 といって、警察がそういって、橋爪を訪ねてきた。
「え、ええ、そうですが?」
 と答えると、
「少しご足労願えますか?」
 というではないか。
 ビックリして、
「何ですか?」
 と聞くと、
「橋爪幸雄さんをご存じですね?」
 と聞かれたので、
「ええ」
 と答えると、
「身元確認願いたいんですが?」
 という、警察がいうには、
「昨日、橋爪さんが交通事故に遭われて即死だったのですが、遺体を確認してほしいんです」
 といい、その交通事故の場所が、自分の最寄りの駅から、家に帰る途中だったというではないか。
「じゃあ、あの時に俺をつけていたのも、その後の救急車の音も、親父だったのか」
 と思うと、その瞬間、足元がパカッと相手、奈落の底に、叩き落されるかのように思った省吾だったのだ……。

                 (  完  )
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作品名:平均的な優先順位 作家名:森本晃次