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死体発見の曖昧な犯罪

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「ええ、そういうことになりますね。被害者の女性が、誰なのかということは、最初は分からなかったけど、彼女だと分かると、待ち合わせだということも分かりました。でも、なぜわざわざこの場所だったのかということは分かりません。いくら変装していたとしても、分かる人には分かりますからね。でも、私は彼女が服毒していると聞いて分かりました。ここで待ち合わせをしようと言ったのは、彼女ではないかとですね?」
 と彼女がいうと、
「どういうことですか? 普通待ち合わせとかいうと、付き合っている男を想像しますが、それにしては、変装をして、しかも、職場の喫茶室で待ち合わせというのは、あまりにもおかしいですよね?」
 と刑事が言った。
「ええ、そうなんです。彼女が待ち合わせをする人は、もうこの世にはいませんからね。だから、私は最初、彼女が自殺をしようとしたと思ったんですよ」
 というではないか。
「まさか、彼女がつき合っていた男性というのは?」
「ええ、お察しの通り、この間城址公園で殺害された、宮武さんだったんですよ」
 というのを聞いて、皆一様に驚いていたが、桜井刑事だけは、ホッとした表情になっている。
 まるで、
「足りない一つのピースが見つかった」
 というような表情であった。
 彼女の証言から、少し分からなかった部分が分かってきた。
「彼女は、身元がバレたくないが、そこにわざわざ来たということは、呼び出した人に脅迫されているということだろうか?」
 と桜井刑事は考えた。
 しかし、一つ実に不思議なことがあるのだが、もし、今回のこの事件と、この間の城址殺人事件が何らかの形でつながっているとすれば、話として、微妙に、いや、正反対だと思われる部分が多いではないか。
 たとえば、この間の事件では、
「被害者は殺されていて、凶器はナイフである」
 ということである。今回の事件では、
「被害者は死んでおらず、凶器というべきものは、毒だったではないか? 殺す意思がなかったのか、それとも、殺害しようとしたが、単純に分量を間違えたのか?」
 ということである。
 後者の場合に一つ言えるのは、
「毒などというのは、そんなに簡単に手に入るものではない」
 ということで、それなのに、殺害に失敗するというのは、実におかしいのではないだろうか?
 さらに、城址公園でのあの死体は、死後数日経っているというではないか? たぶん、どこかで殺しておいて、あそこに放置したのであろうが、何のために、そんなことをする必要があったというのだろうか?
 そんなことを考えていると、実に謎は深まるばかりだ。
 外見上もそうだ。
「前者は、すぐには発見されない、城址公園の門とところに放置しておいたにも関わらず、後者では、わざわざすぐに見つかり、しかも、身元が分かりそうなところで死ななければいけなかったのか。変装していたから分からなかったのだろうが、それなら、別の場所の方がよかったのではないか? あきらかに、前の殺人とは正反対である」
 といえるのではないだろうか?
 しかも、この二つの事件に関連性がないかも知れないと思った矢先、
「彼女の恋人が、殺された宮武であったということは、この二つが繋がっているということの証拠のようなものではないだろうか?」
 ということが考えられる。
 だが、やはり今のところかなりたくさんの謎があるが、大きなこととしては、まず、
「なぜ、彼女が殺されなかったのか?」
 ということと、
「第一の犯罪で、死体がどこにあったのか分からない」
 ということで、殺害現場が分からないと、事件も進展しないだろうということであった。
 ここまで分かってはきたが、今度は、実際の犯罪の目的であったり、考え方がいまいちわからない。
「ひょっとすると、俺たちが、何か感じてはいないが、何か思い込みによって突っ走っていて、その通りに事件が進んでいないことで、問題が解決しないということなのではないか?」
 と感じるのだった。
「何かのブービートラップに引っかかっている?」
 ということを考えると、
「とりあえず、彼女の話を聴くしかない」
 ということになったが、そこに、捜査本部をさらに落胆させる話が飛び込んできた。
「入院中の女が、記憶を失っているようだ」
 ということであった。
 ただ、このことが、逆に事件解決を早めることになろうとは、まさかその時の桜井を始めとした捜査本部では、思ってもいないことであった。
「このまま事件が進展しなければ、下手をすると、迷宮入りしてしまうんじゃないか? 謎は多いが、分かりやすい事件だと思っていたのに、一体どういうことなんだ?」
 と、捜査本部長は、苛立ちを隠せないでいたのだ。
 それが、急転直下したのが、その数日後、今度はまた、一体の死体が発見されたことだった。
 その死体は、完全に胸を抉られていて、即死だった。ただ、部屋の中の奥に閉じ込められていて、
「異臭がする」
 ということで、管理人が調べた時、押し入れの中に、無造作に放り込まれていた死体が発見されたことからだった。
 その死体は、百貨店を辞めた、沢井のものだった。なぜ、こんなに無造作に捨てられているのを見ると、
「死体が発見されてもいい」
 ということだったのか、それとも、
「犯人がそれだけ無造作というが、ずぼらな人間だった」
 ということからなのか、とにかく、発見された死体は、すでに死後10日近く経っているということであった。
 ということは、
「殺害の順番としては、まず沢井が先で、次に宮武。そして、未遂ではあったが、毒殺されかかった、彼女、名前を大滝由美といった。その彼女が最後だった」
 ということである。
 ただ問題は、彼女がいつその毒をもらったかである。毒殺は、その場にいる必要もないが、いつ死ぬか分からない。あるいは、永久に飲まないという可能性もある。ただ、それも常備薬の中であれば、その限りではない。
 ただ、この事件で一番得をする人間は? と考えると、
「問題は、宮武と由美の関係がどうだったのか?」
 ということである。
 仲が悪かったのなら、由美は宮武に殺されることだってあるだろうが、宮武とは、そんな感じでもなかったという。そうなると、由美が沢井に襲われたのではないかと考えられ、その復讐をしようとして、宮武が沢井を殺すということも考えられるがその割に、そのまま放っておくのはあまりにもひどい。その曖昧な殺人から、沢井を殺したのは、由美ではないかと思える、しかし、そうなると、宮武は誰が殺したというのだろう。
 実は、沢井を殺したのは、由美で、その時に、今回の事件に、宮武が絡んでいる。つまり、借金を棒引きにしてやるから、
「由美を自由にさせろ」
 といっていたようである。
 それを聞いた由美は、宮武を殺し、それをあたかも、沢井のせいにしようとした。しかし、沢井を殺してしまった時、
「もうどうなってもいい」
 ということでいい加減な死体の始末をしてしまった。
 いまさら戻って、何か工作することも危険だし、意味がない。死体はかなり腐乱しているはずだからである。
 そこで彼女は、
「偽装自殺」
 をしようとした。
作品名:死体発見の曖昧な犯罪 作家名:森本晃次