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遺伝ではない遺伝子

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「いや、きっと大丈夫ですよ。今私の中では、繋がっていなかった輪がしっかりと繋がってきているように思えるんですよ。だから、今の私の発想は、さっきまでよりも、かなりの信憑性なのではないかと思うんです」
 というのを聞くと、
「そうなんですね。私も、両親を信用してみようかと思うようになりました。でも、この自分の中にいる魂はどうなんですかね?」
 と聞くと、
「その人は悪い人ではないようですね。幸せだったり、自分をしっかり持っている人には悪さをするような人ではないので、そこは安心してもいいと思います」
 というのだった。
「たぶん、私たち親子は、元々仲が悪かったわけではないと思うんです。なんで両親に反抗的だったのかって今でも思うんですよ」
 というと、
「それこそ、あなたの中の、入りこんだ魂の昔の記憶からなんじゃないですか? あなたの中にあるのは、一種の、「遺伝ではない遺伝子」のようなものだと思うんですよ。だから、まるでウイルスのような、本人には、意識のない行動をすることがあるということなんでしょうね」
 と占い師は言った。
「じゃあ、私は何をすればいいんですか?」
 というと、
「そうですね。あなたは、あまりもう意識しない方がいいかも知れないですね、ここで、あなたのことを私が看破したことで、あなたの中に巣くっている、悪さをしている魂は、抜けていったようですね。私はあなたの中にいる魂が抜けるとあなたが死んでしまうのではないかと思ったので、余計なことはできないと思ったけど、自分からいなくなってくれたのだから、もう安心というところです。ご両親も、まもなく戻ってこられますよ」
 ということで、万事うまくいった。
 しかし、その翌日、この占い師がなくなり、その魂が、誰かその日に生まれた人のところに乗り移ったということを、誰も知らない……。

                 (  完  )
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作品名:遺伝ではない遺伝子 作家名:森本晃次