認知症に遠い心の持ち方
その2
私の叔母の一人におしゃべり好きがいた。その最後は悲惨なもので、医者であるわが母と叔父の二人が経済的にも身体的にも監督はしていたが、世話をしたのは私達夫婦だった。
叔母はなかなか意欲のある人だったようで、若い頃は難しい本も読んでいたようだが性格も小難しく、顔は不美人であった。
若い時に父親に連れられて上京し保母の免許をとっていたが、晩年に何を思ってか再び東京で美容師の免許をとった。
再婚していたので、美容院を開業してからは優しい旦那が食事の他家事を担っていた。
美容院を開業したのは多分私の母から資金が出ていたのだと思われるが、川の傍の狭い一区画にこじんまりした二階建ての美容院だった。記憶に残っているのは私が高校生のときで、通学路にあった美容院へしょっちゅう立ち寄って御飯を食べていたことだ。
叔母の旦那は私の好きな郷土料理のさつまという掛け汁をよく作ってくれた。
作品名:認知症に遠い心の持ち方 作家名:笹峰霧子